米中どちらにも依存する韓国
韓国は、中国にも米国にも等距離を置く「二股外交」しているとよく言われる。安全保障では米国に頼るしかないが、貿易全体の約4分の1を依存する中国とも、付き合わざるを得ないからだ。
政府レベルは、いまだに二股状態ではあるものの、一般の国民の「中国嫌い」は、最近のメジャーな世論調査でますます強くなっている。この影響で、日本に対する感情はやや落ち着く傾向にある。日本では、首相も交代しており、日韓関係改善で動きが生まれる可能性もある。
朝鮮半島の平和を壊す中国?
ソウル大学統一平和研究院が2021年10月5日に公開した「2021統一意識調査」の結果を見てみよう。調査の中心である「南北統一」に対する韓国国民の意識は悲観的だ。「統一が必要だ」と答えた人は10人中4人だけになった。
これは2007年の調査開始以来、最も低い数字だった。特に20、30代の若者が統一に否定的な意見だった。調査は成人男女1200人を対象に面接調査を介して行われた。
北朝鮮が核を持ったまま、ミサイルを発射し続けているので、やむを得ないだろう。むしろ注目すべきは韓国人が、中国をどう見ているかだ。
この調査の中にある「朝鮮半島の平和に脅威である国はどこか」との質問では、中国が46.0%でトップを占めた。昨年の32.4%より大幅に増加した。意外にも北朝鮮(37.9%)よりも高かった。
最近の中朝協力についても「懸念する」との答えが89.5%になっており、「中国は北朝鮮を裏で支えている」と見ているようだ。
原本はこちらhttps://ipus.snu.ac.kr/blog/archives/research_cat/unification_perception-survey。
中国脅威論は日韓で並ぶ
これに先立ち9月下旬に発表されたのが、日本の「言論NPO」と韓国の東アジア研究院(East Asia Institute, EAI)が、日韓で約1000人ずつの男女に聞いた「第9回日韓共同世論調査」だ。
調査の主な目的は、もちろん日韓の国民が相手の国をどう見ているかだ。ところが、注目を集めたのは韓国人の対中国意識だった。
この調査結果を分析する専門家の会合をネット経由で見ていたが、多くの人が、厳しい日韓関係よりも、対中感情の悪化に言及していた。
まず日本人、韓国人が最も軍事的脅威を感じる国は「北朝鮮」だった。ところが「中国」に脅威を感じているという韓国人の回答が、なんと44.3%から61.8%へと17.5ポイントも増えていた。
日本では、ここ数年7割程度が「中国への脅威を感じる」と答えているので、「中国警戒論」は日韓でほぼ並んだ。
詳細な内容は以下(無料の登録が必要)https://www.genron-npo.net/world/archives/11348-2.html。
中国は南北統一を望んでいない
韓国政府系シンクタンクである統一研究院から公表された「統一意識調査」にも、中国に関する質問項目がある。「南北統一を最も望まない国はどこか」という設問で、米国、中国、日本、ロシアの4か国から選ぶものだ。
不名誉なことだが、1位と2位は毎年、日本と中国が争っている。今年は、中国が47.6%で日本(31.8%)を圧倒していた。
「朝鮮半島周辺国への好感度」では、歴史問題でもめている日本の好感度が最も低いが、中国も負けていない。前年に比べてマイナス1.65と最も大幅に下落した。
この原因についてはさまざまに語られている。本サイトでは青山誠さんが中国による終末高高度防衛(THAAD)ミサイルへの報復や中国と朝鮮半島の歴史的背景に触れており、興味深い。
他にも、韓国で民族を象徴する食べ物であるキムチを、中国人が「起源は中国」と主張し、韓国人の自尊心を傷つけているとの分析もある。
北朝鮮との南北統一は遠い先のことであり、もう中国に気を使うべきではないという考えが広がっているとも判断できるだろう。
あまり望ましい話ではないが、「敵の敵は味方」という言葉もある。今後、強大で強引な国、中国のおかげで、韓国は「中国よりはマシだし、自分たちと共通項が多い。韓流もそのまま楽しんでくれている」などと、以前より日本に対して友好的になってくるだろう。
五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)、『新型コロナ感染爆発と隠された中国の罪』(宝島社、2020年・高橋洋一らと共著)、近著『金正恩が表舞台から消える日: 北朝鮮 水面下の権力闘争』(平凡社、2021年)。
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