学生支援緊急給付金対象から除外を問題視
北朝鮮国営メディア・朝鮮中央通信が9月15日、朝鮮大学校を巡る日本政府の対応を非難する記事を掲載した。昨年5月に日本政府が新型コロナ関連支援策の一環として創設した「学生支援緊急給付金」制度において朝鮮大学校(東京都小平市)の学生が対象から除外されていることについて問題視したものである。
同制度では、国公私立大や短大、専門学校の学生だけでなく、留学生や日本語教育機関も幅広く対象となっているが、朝鮮学校は「各種学校」に該当するため給付対象から除外されている。この点で朝鮮大学校側や有識者らが是正を求めてきたが、日本政府の対応に変化はない。
記事は、立憲民主党主催の当事者ヒアリングが9月7日に開催されたことも紹介し、「在日朝鮮人が日本当局の差別と朝鮮学校に対する人権侵害に抗議するための闘いを続けている」と伝えた。
日本政府「除外は差別ではない」
同通信の記事の中では、日本政府に出された国連勧告についても言及されている。
今年2月19日、国連人権理事会の特別報告者4人は同問題について、「人種や民族に基づく差別にあたるおそれがあり、民族教育へのアクセスを阻害することにつながる」との懸念を示した共同書簡を日本政府に送付し是正を求めた。
これに対して日本政府は4月19日、「日本人・外国人を問わず、各種学校や専修学校における高等課程および一般課程に在学する学生は対象外で、恣意(しい)的な人種、民族、国籍を利用した差別には相当しない」旨回答して是正には応じていない。
また、9月7日の当事者ヒアリングの場で見解を問われた外務省側は、「国連人権理事会特別報告者の共同書簡は国連のものではなく個人の見解である」と述べ、対応に問題はないと一貫した姿勢を示している。
このように勧告を無視する日本側の姿勢に対して記事は「差別を正当化している」と強く非難した。
北朝鮮側は朝鮮学校を巡る問題を注視
北朝鮮外務省や国営メディアはこれまでも、高校無償化や幼保無償化などの制度から朝鮮学校が対象外となっていることを「差別的な民族排他主義」と繰り返し非難してきた。そのため、学生給付金を巡る問題についても人権問題として扱っていくものとみられる。
最近の動きとしては、朝鮮大学校が9月6日、日本政府の国連共同書簡に対する上記回答(4月19日)への見解を大学公式サイト上に掲載し、「国連共同書簡において示された懸念(民族教育へのアクセス等)に対する回答になっていない」と反論している。
また、朝鮮大学校学生委員会は7日、勧告を再度出すことを求める国連特別報告者に宛てた要請書を発表したほか、学生が制度の是正を求める動画をユーチューブで配信するなど、政府や国際社会への訴えを続けている。
今後も北朝鮮側は、朝鮮学校側の活動動向や日本政府の対応を注視していくものとみられる。
Appeal of Korea University students against exclusion from the “ESSHCS”
八島 有佑
@yashiima