北朝鮮メデイアの対日論評が急増する4月

北朝鮮メデイアの対日論評が急増する4月

太陽節を祝う平壌(提供 コリアメディア)

北朝鮮メデイアの対日論評が急増する4月

 4月に入り、北朝鮮メディアの対日論評が増加している。たとえば、国営メディア・朝鮮中央通信は4月8日、日本海表記問題について言及。坂井学官房副長官は3月、米インド太平洋軍が韓国側の主張する「東海」という表現を声明で使用したに抗議したが、この対応を非難。表記については「歴史主義的慣例などを踏まえると東海表記が正当」と主張している。

 同通信は15日には、日本政府が東京電力福島第1原発の処理済み汚染水を海洋放出する方針を決定したことを非難。日本の決定は「人類に新たな大災難」を引き起こすと批判し、撤回するよう求めている。

 さらに同日、竹島(北朝鮮と韓国では独島と表記)を「固有の領土」と表記した高等学校教科書が検定を通過したことに対して、同通信は「歴史の歪曲」と非難する論評も掲載している。

 このように日本側の施策などに反応して声明を出している。

治安維持法を引き合いに出して歴史認識問題を提起

 その他にも、4月22日は「治安維持法」(1925年制定、1945年廃止)の公布日であったことから、政府機関紙・民主朝鮮が「日帝の罪悪を告発する」と題した記事を掲載。

 同法は、反国家政治運動の取締りを目的として制定されたが、これにより「我が人民の反日民族解放運動を容赦なく弾圧した」と糾弾。その上で、「最近も日本反動は、いわゆる証拠と資料、歴史的事実がないと主張し、国際社会の面前で過去の犯罪を全面的に否定するという破廉恥な行為を働いている」と指摘している。

 記事自体は治安維持法を非難するものであるが、それと同時に「日本が歴史的事実を無視している」と日本の歴史歪曲を訴えているのだ。

 このように4月の対日論評では、特に歴史認識問題がキーワードとなった

2021年1月〜3月の対日論評は25件

 2021年1月から3月までの対日論評について、朝鮮中央通信、労働新聞(党機関紙)と民主朝鮮(政府機関紙)、わが民族同士(祖国統一委員会ウェブサイト)、北朝鮮外務省ウェブサイトの5媒体を検証した。

 これら媒体における対日論評は25件(筆者把握分)であり、2月、3月と増加している。
 
 昨年(2020年)の同媒体の対日論評は153件で、直近4年間で最小となっていたが、このままの増加傾向が続けば論評数は昨年を上回る見込みである。

2020年と変わらない論評の主張

 論評の内容は、歴史認識問題や拉致問題、安全保障など多岐にわたっているが、その多くは日本に対して、「正しい」歴史認識と過去清算を求める内容となっている。

 拉致問題については、従来通り「解決済み」との主張を行なっている(2月2日朝鮮中央通信など)。

 根本的な北朝鮮の主張は2020年とおおむね変化はない。北朝鮮からすれば、「菅政権になっても日本の対応や姿勢に変化がない」という見方なのだろう。

 2020年の論評における主な日本への要求は、1.対北朝鮮敵視政策の撤回、2.過去清算(植民地支配による人的・物的被害等)、3. 朝鮮学校への差別是正を含む在日朝鮮人への対応改善であった。

 日本政府の対応が変化しない限り、北朝鮮側は今後も同様の主張を繰り返していくとみられる。
 

八島 有佑

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