韓国国防白書で日本の位置付けが格下げか
韓国国防白書で日本の位置付けが格下げか
韓国国防省は2月2日、2020年版「国防白書」を発表した。
日本に関しては、前回の18年版白書においては「共に協力していかなければならないパートナー(同伴者)」と表現していたところ、20年版では「共に協力していくべき隣国」と表現が後退している。
白書の中では、18年のレーダー照射問題などへの日本政府の対応が「未来志向的な発展の障害になっている」とも指摘している。
このように白書では悪化する日韓関係が反映された形となったが、韓国側は今後どのように日本と付き合おうとしているのだろうか。
韓国政府の現在の認識を分析したい。
「慰安婦判決に困惑」
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、1月18日の新年記者会見で日本に言及し、日韓関係について見解を語っている。しかも、関係改善に前向きな姿勢である。
まず、文大統領は「韓日間で解決しなければ懸案が複数ある」と前置きした上で、「そうした(解決への政治的な)努力の中で慰安婦判決問題が加わってしまい、率直に行って多少困惑しているのは事実」と述べた。
1月8日に日本政府に元慰安婦らへの賠償を命じた韓国の地裁判決について、「困惑している」と言及したのだ。
さらに、「日韓合意」については、「公式的な合意であったという事実は認める」と述べ、合意の有効性を言明した。
日韓合意は15年12月の日朝外相会談でなされた合意で、「日韓慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した」という内容となっている。
日本側はこれをもって、「韓国側が解決した問題を蒸し返している」と異議を唱えてきたが、韓国では「日韓合意自体が無効」という見解もある。
このような対立の中で、文大統領が合意の有効性を認めたことは、日本にとっては喜ばしいことだろう。
文大統領は「日韓合意という土台の上で、今回の判決を受けた被害者のおばあさんたちも同意することができるような解決方法を見つけるため、韓日間で協議していく」として、日韓協議を進めていく方針を示した。
元徴用公訴訟「外交的な解決策を優先すべき」
いわゆる元徴用工訴訟では、敗訴した日本企業の資産の差し押さえ手続きが完了している段階である。
韓国の裁判所が資産の売却命令をいつ出すかは不明で、競売を経て現金化が進めば日本政府は対抗措置を取る姿勢を示している。
このような状況の中、文大統領は記者会見で、「(判決に基づく)強制執行の方式で現金化されるなどして判決が実現される方式は韓日関係において望ましくない」とした上で、「外交的な解決策を見出すことが優先されるべきである」との見解を示した。
文大統領は、18年10月の徴用工訴訟判決以降、一貫して「司法判断を尊重する」と司法への不干渉を主張してきたことから、一歩踏み込んだ発言と言える。
この外交的解決策について、「(元徴用公訴訟の)原告が同意できるものにならなければならない」という条件を付けたものの、「韓国政府は原告を最大限説得する」とまで言及している。
時間をかけて対話と交渉を進めるしかない
時間をかけて対話と交渉を進めるしかない
上記のように文大統領の記者会見での発言は、今までになく日本に譲歩したものとなっている。
韓国内での反発も予想できた中で、このような見解を表明したのは、文大統領が日韓関係の改善を企図していることにほかならないだろう。とは言え、日本政府は「日韓合意の遵守を求める」と述べ、一歩も譲らない姿勢である。
日韓問題に詳しい韓国の専門家は、「韓国政府としては、悪化する日韓関係に歯止めをかけたいと考えつつも、三権分立の観点から司法に介入できないという難しい状況に置かれている。文大統領の記者会見での発言は、そのような制約の中で精一杯のリップサービスと言える。日本が歴史認識問題に誠実に向き合うようになれば、文政権としても思い切った対日政策を打ち出すことができるだろう」と説明する。
このような変化は、米国でバイデン政権が誕生し、日米韓の連携が求められていることも要因となっている。
ただ、日韓合意の件で明らかなように、歴史認識問題を解決せずに妥結案を講じても、再び日韓関係が破綻するのは明白である。
その場しのぎの関係改善ではなく、時間をかけて対話と交渉を進めていくほかないだろう。
八島 有佑