党規約改正のもう1つの注目点

党規約改正のもう1つの注目点

第8回党大会に出席した金正恩総書記(提供「コリアメディア」)

 「朝鮮中央通信」など北朝鮮国営メディアは1月10日の報道で、朝鮮労働党規約の改正について伝えている。党規約改正は1月5日から開催されていた第8回党大会で討議されたものである。

 今回の改正により、「強力な国防力で軍事的脅威を制圧し、朝鮮半島の安定と平和的環境を守る」という趣旨の文章が党規約の序文に追加されたことは、日本や海外メディアでも大きく報じられている。

 加えて、今回の序文改正には他にも注目点がある。

 同じく序文について、「海外同胞の民主的民族権利と利益を擁護、保障し、海外同胞を愛国・愛族の旗印の下に固く結束させ、民族的自尊心と愛国的熱意を呼び起こすことに関する内容」が盛り込まれたというのだ。

 「海外同胞」とは、在日朝鮮人をはじめ、中国や米国などに居住する在外朝鮮人を指す。現時点では追加された具体的な文章は不明だが、今後、海外同胞に関して何らかの政策が提示される可能性もある。

海外同胞に対する期待の表れか?

 海外同胞を巡っては、北朝鮮の憲法(朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法)には元々、海外同胞に関する条文がある。

 憲法15条において、「朝鮮民主主義人民共和国は、海外に在住する朝鮮同胞の民主主義的民族権利と、国際法によって公認された合法的権利と利益を擁護する」と記されているのだ。

 ただ、憲法では「海外同胞の権利擁護」という言及にとどまるが、今回党規約に追加された内容は「結束」や「民族的自尊心と愛国的熱意を呼び起こす」などより踏み込んだ内容とされている。

 そのため、今回の党規約改正は、単なる原理原則を示すだけではなく、今後の海外同胞の役割や働きに期待してのものとも考えられる。

 このタイミングで海外同胞を巡る記述を追加した意図は現時点では不明だが、今後、海外同胞に関する政策が行われることになれば、新たにこれを統括する専門部署が作られる可能性もある。

金正恩総書記、朝鮮総連を海外同胞団体のモデルケースとして評価

 さて、海外には同胞団体が数多くあるが、その中でも最大規模とされるのが「在日本朝鮮人総聯合会」(朝鮮総連)である。

 今回の党規約改正における海外同胞の記述においては朝鮮総連が念頭にあることは間違いない。

 たとえば、金正恩総書記は昨年11月1日、「総聯分会代表者大会-2020」の参加者に祝賀メッセージを送っており、朝鮮総連への期待感を示している。

 党機関紙『労働新聞』(同日付)の報道によると、金正恩総書記はメッセージの中で、「世界には海外同胞団体が少なくありませんが、同胞のいるすべての地域に下部末端の基層単位まで作られ、同胞コミュニティーの戸主たちが定期的に集まって盛大な大会まで開く組織は我々の総聯しかありません」と評価した。

 さらに、「総聯分会の活動家のような、民族自主精神に徹し、自分のものを大切にする熱血の愛国者が多かったので、海外同胞組織のモデルとして輝く今日の総聯がある」と賞賛するとともに、「日本の人民との友好親善」に努めるよう呼びかけている。

 まさに朝鮮総連は「海外同胞組織・活動のモデルケース」と位置付けられているのだ。

 今後、北朝鮮本国が「海外同胞の結束」を具体的に施策化することになれば、朝鮮総連が中心的な役割を果たすとも考えられる。

八島 有佑

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