常務委員解任報道の李炳哲氏が軍序列1位に

常務委員解任報道の李炳哲氏が軍序列1位に

7月28日、金正恩総書記の中朝友誼塔訪問に同行した李炳哲氏(金正恩氏左側)。7月29日付の労働新聞より(提供 コリアメディア)

常務委員解任報道の李炳哲氏が軍序列1位に

 6月末の党政治局会議で、最高指導部である党政治局常務委員を解任されたとみられる李炳哲(リ・ビョンチョル)氏。一時は「すべての職を解任されたのでは」という見方もあったが、軍序列1位に復帰した可能性が出てきた。

 国営メディア・朝鮮中央通信は7月29日、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が祖国解放戦争勝利記念日に合わせて28日に中朝友誼塔を訪問したと伝え、その中で李炳哲氏ら同行者を紹介した。

 通常、氏名の紹介順序はそのまま党内の序列と一致するため、李炳哲氏の序列や職責を推測できるのである。

 李炳哲氏は趙甬元(チョ・ヨンウォン)氏、李日煥(リ・イルファン)氏、鄭尚学(チョン・サンハク)氏の党書記3人に続いて紹介された。党書記の後に紹介されたことから、今でも常務委員には復帰していないと考えられる。

 一方で、軍幹部の中では1番最初に名前が出てきたことになる。李炳哲氏の後は朴正天(パク・ジョンチョン)軍総参謀長、権英進(クォン・ヨンジン)軍総政治局長、李永吉(リ・ヨンギル)国防相と軍最高幹部らが続いている。朝鮮人民軍では彼らより上位ポストは確認されていないため、軍序列1位と言える。

 写真では李炳哲氏は金正恩総書記の左隣に立っており、その立ち位置からも序列が上位であることを推測できる。ちなみに、金正恩総書記の右隣は党ナンバー2「第1書記」と指摘されている趙甬元氏である。なお、元帥の階級を維持しているかは不明である。

朴正天氏とともに「重大事件」の責任を問われる形で解任

 李炳哲氏の常務委員解任ニュースは6月29日開催の党政治局拡大会議が発端であった。金正恩総書記は会議で、新型コロナウイルス対策のための防疫体制において「重大事件」があったと叱責した。いまだ事件の全容は明らかにされていないが、入国管理などに問題があったと考えられる。

 会議においてその責任を問われる形で最高指導部とされる政治局常務委員や政治局委員などのメンバーが解任されたと北朝鮮国営メディアが報じたのである。

 誰が解任されたかは明らかにされていないが、採決時の写真で常務委員の李炳哲氏と、政治局委員の朴正天氏が挙手していなかったことから、この2人が解任されたとみられていた。

 李炳哲氏と朴正天は北朝鮮の核・ミサイル開発を主導してきた立役者として知られ、これまでスピード出世を遂げてきたことから、その解任説に海外からも注目が寄せられた。

失脚説流れるも李炳哲氏と朴正天氏の健在が明らかに

失脚説流れるも李炳哲氏と朴正天氏の健在が明らかに

7月8日、金正恩総書記に同行した3列目の李炳哲氏と2列目の朴正天氏(提供 コリアメディア・赤丸は著者加工)

 この時に李炳哲氏と朴正天氏の粛清説や失脚説などの憶測も出た。北朝鮮情報では真偽不明なことも多く、「解任=粛清、失脚」とされることが多々あるが、今回の場合は北朝鮮側の報道により一蹴されることになる。

 金正恩総書記が7月8日の金日成(キム・イルソン)主席の命日に際して錦繍山太陽宮殿を訪れたが、同行者として李炳哲氏と朴正天氏の姿があったのである。

 幹部らが整列する写真では、李炳哲氏が政治局員候補(政治局員の次の地位)の並ぶ3列目にいたことから、降格が決定的となっていた。

 一方、朴正天氏は政治局委員が並ぶ2列目にいるため、現在も政治局委員を務めているとみられる。ただし、元帥から次帥に降格となっている。

 このように2人の降格は事実かもしれないが、一連の報道により2人の健在は確かである。「自衛力強化」を掲げる金正恩総書記にとって、李炳哲氏と朴正天氏への期待はいまだ大きいのかもしれない。
 

八島 有佑
@yashiima

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