万寿台創作社の画家の絵
万寿台創作社の画家の絵
「一般の中国人はこの価格で買わないでしょうね」と話すのは中国・瀋陽の朝鮮族実業家の黄さん。
春以降、北朝鮮から絵画の売り込みが増えているという。売り込みは黄さんへ買ってくれよりも絵画の展示会のスポンサーになってくれないかという打診だった。
黄さんによると話を持ってきたのは、丹東駐在の北朝鮮人からで、他にも中国各地の影響力がある朝鮮族へ提案をしているとのこと。
絵画は主に季節感ある風景画や何気ない日常の北朝鮮女性など人物画で、政治色の強いものはなく、いずれも油絵のようだ。描いている画家は、北朝鮮関係者から提供された資料によると、万寿台創作社副社長や金日成賞受賞者などいずれの肩書も万寿台創作社所属の北朝鮮を代表する一流画家たちだと胸を張る。
「朝鮮族の私たちから見ても画家らの所属が本物か、実在する人物かどうかもわかりません」(黄さん)
17万円の北朝鮮の絵画を買う中国人はいない
北朝鮮関係者から打診されている内容は、展示会を絵画の運搬費も含めて中国側負担で開催してほしい。会場は人通りが見込める一等地で、北朝鮮側が定めた価格で販売し、売れたら成功報酬を支払うというものだ。という中国側がリスクをとる内容となっている。
黄さんが懸念するのは北朝鮮側が定める希望販売価格で、一番安い絵画で1万元(約17万円)以上となっている点だ。
「お金持ちの中には高い絵画に興味持っている人はいますが、(北)朝鮮の絵画を1万元以上で買いたいと思う中国人はい少ないでしょうね。中国人は世界的なブランドや有名なものを好むので、もし1万元払うなら朝鮮の絵ではなく、世界的な名画の複製画や資産価値になるエディションナンバー付きの著名な版画などを選ぶと思いますよ」(同)
絵はすでに中国にある?
その後、黄さんの尽力のおかげか、この夏に瀋陽での展示会開催が決まったようだ。ここで疑問に思うのは、「絵画は北朝鮮から送られてくるのか?」である。
黄さんに聞いてもらったところ、絵画をどこから送るかは濁し、「すぐに発送できる」とだけしか返答しないそうだ。
「話しぶりから絵画はすでに中国にあり丹東あたりで保管しているのかもしれませんね」(同)
ここで丹東と絵画でピンとくるのは、新型コロナウイルスショック直前の2019年12月から休館状態が続く「中朝文化展覧館」の存在である。
昨年末時点では残っていた公式サイトには、大量の絵画の常設展示に加えて館内で創作活動をしながら生活もする北朝鮮人芸術家120人がいることを謳っていた。
中朝文化展覧館はすでに再開見込みがないのか、ここの大量の絵画を中国各地で売却して外貨稼ぎをと考えているのかもしれない。画家も国境封鎖で帰国できず、丹東にそのままいたりする可能性も考えられそうだ。