患者として北朝鮮の病院へ
患者として北朝鮮の病院へ
「実は平壌で病院へ行きました。腹痛でぶっ倒れて」
「は?」
中国の旅行代理店手配で訪朝した20代前半の日本人男性が、経由地の中国へ戻ってきたので、代理店担当者が旅の感想を聞くために食事に誘っていた。
北京ダックの有名店で着席するや、いきなり飛び出た発言が北朝鮮滞在中に病院体験をしたというものだった。
訪朝を重ねると行ける場所がだんだん増えると言われる北朝鮮旅行。珍しい場所へ行くことができたことを自慢する訪朝者もいるが、病院へ患者として行った人は珍しいのではないだろうか。
高麗ホテルの客室で寝旅行
男性の話よると、丹東から国際列車で入国して、観光本番となる2日目の朝、出発前に起こった。動けないほどの猛烈な腹痛に襲われ意識もうろうのまま病院へ連れて行かれることに。そのため男性はどこの病院へ行ったかはわからないという。
宿泊していた高麗ホテルから自動車で15、20分くらいで着いたので、平壌市内だと思われる。男性は何もない診察室へ担ぎ込まれて、老齢の白髪医師が英語での問診とガイドの通訳を交えながら確認。触診はせずに急性腸炎と診断されたという。
中国はどんな病気でもすぐに点滴をするが、点滴も入院もせず、2時間ほど病院で休憩して、昼前に高麗ホテルへ戻り自室で休息することに。
結局、男性は2日目、3日目とホテルの客室で養生することになり、3日目の夕方に少し平壌市内を観光しただけで、4日目の午前の瀋陽行きの飛行機で出国している。
男性が平壌でそんな「寝旅行」をしていたことを代理店担当者は、知らされていなかったので、つゆ知らず、聞いて仰天した。
持ち帰った巨大薬
持ち帰った巨大薬
代理店担当者によると、北朝鮮旅行で食事や水が原因と思われる軽い食あたりになる人はいて、滞在中ずっと腹を下している人もいるそうだ。それでも観光できないほど重症で現地の病院体験した人は初めてだったという。
男性は食事中に小さな薄茶色の紙袋を取り出し、中身を見せててくれた。平壌の病院で処方してもらった薬だった。楕円形の錠剤だが大きい。日本の一般的な錠剤の2、3倍ある。薬は透明の袋に朝鮮語と英語で書かれた領収書と一緒に豪快に入っていた。
男性は薬を数錠飲んだら症状が改善し始めたので、そこで飲むのをやめて、そのまま持ち帰っていた。思い出として茶袋と一緒に保存するそうだ。
ちなみに病院の費用は人民元で200元(約3400円)かかったという。中国の大学病院で腸炎治療として点滴を打つのと同じくらいの費用だ。
決して安くはない北朝鮮旅行が、結果的にとんでもない体験になってしまったのだが、男性は他の外国人が体験できない貴重な体験ができたのかもしれない。
中国の北朝鮮代理店は、日本人であっても旅行保険が適応されるので、男性は多少もらえたようだ。それもまた貴重なレア体験になったのであろうか。