初の官民協議会議開催
初の官民協議会議開催
韓国政府は6月4日、韓国の元慰安婦らが日本政府に賠償を求めた裁判を巡り、官民が参加する「官民協議会議」を開いた。韓国・聯合ニュース(韓国語版)が同日、「政府、慰安婦問題の解決のための初の官民協議」と題した記事で伝えている。
会議は具潤哲(ク・ユンチョル)国務調整室長が主宰した。会議には崔鍾建(チェ・ジョンゴン)外交部第1次官や、金京善(キム・ギョンソン)女性家族部次官など政府高官が参加し、民間からは被害者支援団体関係者や弁護士、研究者らが出席した。
これまで政府関連部署が個別に元慰安婦や支援者と面談したことはあるが、関係官庁と被害者側、専門家が一堂に会したのは今回が初めてとのことだ。
官民協議会議は慰安婦問題解決のため各界の意見を取りまとめるのが目的で、今後も定期的に開催されることが予想される。
今年4月に韓国大統領府秘書官と支援団体ネットワークが協議
突然の官民会議報道であったが、実は今年4月に関連の動きがあった。
元慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)や元慰安婦が共同生活を営む「ナヌムの家」など5団体で構成された被害者支援団体ネットワークが4月29日に、韓国政府関係者と面談していた。
面談相手は韓国大統領府の金霽南(キム・ジェナム)前市民社会首席秘書官。ネットワーク側が面会事実を明らかにしており、被害者の支援や歴史教育などについて協議したと伝えていた。
箝口令(かんこうれい)が敷かれたのか両者から協議の詳細や今後のスケジュールについてまったく情報が出てこない状況であったが、その後も政府側と話し合いが続けられて今回の官民協議会議につながったと考えられる。
ちなみに5月に市民社会首席秘書官が金霽南氏から方正均(パン・ジョンギュン)氏に交代しているが、今回の官民協議会議にどのように関係したかは不明である。
日本に再協議を求める韓国政府
元慰安婦関連の訴訟で今年1月と4月に大きな判決が出ている。訴訟では、国家には他国の裁判権が及ばないとする国際法上の「主権免除」原則が争点となっていた。ソウル中央地裁は1月8日の判決では日本政府に賠償を命じたが、4月21日の同種訴訟では日本政府の主張通り主権免除を認めて原告(元慰安婦側)敗訴となり、判決にねじれが生じていた。
4月の判決の際、裁判所は「韓日合意(日韓合意)は有効だが、慰安婦問題解決のためにはさらなる外交努力が必要」という認識を示していた。同じく、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も今年1月の新年記者会見で、「韓日合意は公式的な合意であった」と認めた上で、「解決に向けて韓日間で協議をしていく」と述べている。
日韓合意は2015年の朴槿恵(パク・クネ)前政権時に締結したもので、「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した内容。文在寅政権としてはこの日韓合意を有効としつつも、日韓合意に反対する元慰安婦の納得を得るために日本と再協議したい意向だ。
ただ、日本政府は「慰安婦問題は解決済み」として再協議に取り合わないため、韓国政府が苦慮している状況である。そのため官民協議会議を通じて韓国政府がどのような対応をとっていくのか注目が寄せられる。
八島 有佑