バイデン大統領が韓国企業の対米投資に感謝

バイデン大統領が韓国企業の対米投資に感謝

韓国・ソウルのサムスン電子本社 出典 Oskar Alexanderson [Public domain], via Wikimedia Commons

バイデン大統領が韓国企業の対米投資に感謝

 ジョー・バイデン米大統領は5月21日(現地時間)、韓米首脳会談直後の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との共同記者会見で、経済使節団として文大統領に同行した韓国企業名を読み上げて感謝の意を伝えた。韓国企業4大グループが、総額394億ドルの対米大型投資を決定したからである。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の今回の韓米首脳会談の主な目標は、朝鮮半島問題および新型コロナワクチン供給に関して米国の協力を得ることであった。そのための交渉カードが経済協力だったと言える。ちなみに、米国が韓国軍55万人にワクチン提供を約束している。

総額394億ドルの超大型投資

 文大統領は21日、文勝煜(ムン・スンウク)長産業通商資源部長官とジーナ・ライモンド商務長官とともに、米韓企業が一堂に会するビジネスラウンドテーブルに出席。その中で韓国4大企業による対米投資が発表された。

 各社発表や報道によると、サムスン電子が170億ドル(約1兆8500億円)、LGエネルギーソリューションとSKイノベーションが合弁会社設立などで140億ドル(約1兆5250億円)、現代自動車が74億ドル(約8060億円)、SKハイニックスが10億ドル(約1090億円)以上となっている。総額394億ドル(約4兆2900億円)の超大型投資である。

 中でもサムスン電子が170億ドルかけて行う米国内での半導体新工場の建設計画には注目が集まる(建設場所は未定)。

 米韓首脳会談の直前に開かれたこの会議は、韓国側の交換条件としての手土産を示す場であったとも言える。

米国が「半導体価値同盟」を構築し中国をけん制

 韓国企業への対米投資誘致の動きは以前からあった。米国商務省は今年4月12日に世界的な半導体、通信、自動車企業の幹部を招いて第1回「半導体対策会議」が開催した。

 出席したバイデン大統領は、「国籍に関係なく『半導体価値同盟』(AVC=Alliance Value Chain)を構築して中国を牽制すべきである」と強調し、米国の競争力は「あなたがた(参加企業)がどこに投資するかにかかっている」と呼びかけた。

 また、米韓首脳会談の直前の5月20日に第2回半導体対策会議を開催。ライモンド商務長官は「今回の会議の目標は、さまざまな業界のリーダーを集めて、半導体不足が与える影響や、短期的・長期的な解決策について情報を得ること」としている。

 会議には米国のグーグルやクアルコム、韓国のサムスン電子、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)などが参加しており、第1回会議以降、対米投資を発表する参加企業も出ている。TSMCは「中国の顧客企業との取引を中止する」とまで発表している。

 だが、ここまでサムスン電子は具体的な投資計画は発表していなかった。
 

米中対立の板挟みとなったサムスン電子

 実はサムスン電子の対米売上と対中売上は拮抗しており、簡単に中国を切り捨てられないという事情が存在する。

 事業報告によると、2020年の対米売上は全体のうち28%、対中売上は26%となっており、サムスン電子は米国市場と中国市場の双方に依存。

 米・ニューヨークタイムズが2019年6月8日に「韓国のサムスン電子とSKハイニックスや、米国のマイクロソフトなど先端企業関係者を呼び、アメリカの対中制裁に参加すれば深刻な事態を招くと警告した」と報じているが、ここまでサムスン電子は米中両国から踏み絵を迫られてきた状況にある。

 サムスン電子が米国に大型投資すれば、中国政府から工場の資産凍結を受けるおそれもあるし、中国の生産拠点を拡大しようとすれば、米国の圧力を受けることになる。そのため、今回、サムスン電子が170億ドル対米投資を発表したことで、中国から何らかの反発を受ける可能性がある。

八島 有佑

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