日米韓情報機関トップが東京で会合
日米韓情報機関トップが東京で会合
日米韓3か国の情報機関トップによる会合が5月12日に東京で開かれた。滝沢裕昭内閣情報官と、日本を訪問していたアヴリル・ヘインズ米国国家情報長官、韓国・朴智元(パク・チウォン)韓国国家情報院長が協議した。いずれも各国の情報機関のトップである。協議内容は発表されていないが、バイデン政権が決定した対北朝鮮方針を踏まえ朝鮮半島政策について意見を交わしたとみられる。
今月5日には日米韓外相が会談し、「北朝鮮の完全な非核化に向けた3か国連携の重要性」を確認しているが、これを踏まえて開催された形だ。
なお、韓国メディアは「朴院長が日本滞在中に菅義偉首相と会談し、日韓関係について意見交換した」と報じているが、加藤勝信官房長官は「情報部門における活動という性格上、具体的な活動内容に関しコメントは差し控える」(13日記者会見)と会談の有無について明言を避けている。
ヘインズ長官が文在寅大統領と会談
日本での協議を終えたヘインズ長官は、続いて韓国を訪問。5月13日には南北を隔てる非武装地帯(DMZ)を視察し、14日には文在寅(ムン・ジェイン)大統領や徐薫(ソ・フン)国家安保室長と会談した。
韓国大統領府は、文在寅・ヘインズ会談では「朝鮮半島情勢について幅広くかつ深く意見交換した」と発表している。
韓国側の発表によると、文大統領は会談で「韓米の情報協力関係がさらに発展して、韓米同盟が一層強固になることを願う」との認識を伝えたとのことである。これに対し、ヘインズ長官は「韓米同盟は安保同盟以上の価値を持つ」とした上で、「文在寅大統領が人権と平和のために歩んできた道に尊敬を表する」と肯定的な見解を示したと伝えている。21日に予定されている文大統領の訪米を目前にし、米韓同盟が強固であることを改めて強調した。
米韓首脳会談でどのような合意があるかに注目
さて、その機密性から当然ではあるが、日米韓の情報機関トップ会談から1週間が経過した5月20日現在もその詳細は発表されていない。
日本ではこの協議についてあまり報道されていないが、この動きは非常に重要な出来事である。日米韓外相会談に続いて行われた情報機関トップ会談は、「日米韓が対北政策を進めている」という北朝鮮へのシグナルにもなった。
対北対話を一貫して訴える韓国と、日米韓連携の上での対北交渉を目指す米国に対し、日本がどのような姿勢を示したのかは現時点で不明である。だが菅首相は以前から、拉致問題解決を訴えながらも「前提条件なし」での北朝鮮との対話方針を表明しており、米韓が動き出せば日本政府としても対話の糸口を模索すると考えられる。
21日には米韓首脳会談を控えており、ここで対北政策について何らかの合意がなされれば、朝鮮半島情勢は一気に動き出すだろう。
まずは米韓首脳会談後、文政権とバイデン政権がどのような発表をするかに注目である。
八島 有佑