4月に751人検査も感染者0人
世界保健機関(WHO)が5月11日に公表した報告書によると、北朝鮮で4月23~29日に751人が新型コロナウイルス検査を実施したが感染者はいなかった。検査を受けた人たちのうち139人は、インフルエンザ類似疾患または、重度の呼吸器感染症を患っていたが、いずれも新型コロナ感染は確認されなかったとのことである。
北朝鮮でこれまで新型コロナウイルス検査を受けたのは、累計2万5986人となったが、報告では感染者は0人を維持している。
北朝鮮へのワクチン供給に遅れ
北朝鮮はコバックス(COVAX)を通じて、現在までに199万2000回接種分(99万6000人分)の新型コロナウイルスワクチン(アストラゼネカ製)を確保している。
COVAX は2021年末までに低中所得国を含む参加国にワクチン20億回分を配布することを目標としている。2月に発表した供給計画では、供給分のうち35%~40%が2021年第1四半期(1~3月)に、残りは第2四半期(4~6月)に供給されることになっていたが予定よりも遅れている。
北朝鮮は5月までに170万4000回分(85万2000人分)を受け取る計画だったが、大幅な遅れが見込まれる。
ワクチンだけに頼らない「朝鮮式防疫体制」主張
一方、北朝鮮は「ワクチンは万能薬ではない」として、現在取り組んでいる防疫体制を徹底することが重要であると主張している。5月4日付の朝鮮労働党機関紙・労働新聞が伝えた。
同紙は、新型コロナウイルスワクチンが不安と恐怖に苦しむ全世界の人類にとっての「希望の光」とみなされていたが、いまだ感染が収束しない状況から「ワクチンが決して万能の解決策ではないことは、他の各国の実態からも如実に証明されている」と指摘。
報告されている副作用についても触れ、ワクチンだけで新型コロナウイルスに対応するのは不可能であるという見解を示したのである。その上で、「世界的な大災難を招いた悪性感染症事態がいつ終息するのかは、誰も答えられない未知数になっている」と新型コロナの影響が長引くものと分析。「非常防疫戦の長期戦を見据え、徹底的に備えることが必要」として、「防疫体制を朝鮮式に完成すべき」と主張した。
感染者0人でも非常防疫活動を最優先
北朝鮮では4月に中止されていた学校での対面授業が再開されたことが北朝鮮メディアで報じられている。それまで対策の一貫として遠隔授業や教師が家庭を訪問する形で学校教育を行っていた。
今後は国境管理などの制限を少しずつ緩和していくものとみられるが、それでも、新型コロナ対策が最優先であるのは変わりないようだ。
労働新聞は5月20日、金正恩総書記の「党の予防医療方針を貫徹しなければならない」という言葉を掲載。今年1月開催の第8回党大会で定められた「新5か年計画」実行やそれに伴う社会主義建設においても、「非常防疫活動を厳格に確立することが最重要」であると強調した。
八島 有佑