失業者数157万人(2021年1月)
韓国の統計庁は2021年の2月10日に雇用動向を発表した。それによると2021年1月の失業率は、前年同月に比べ1.6ポイント悪化し5.7%となり、失業者数は157万人となった。この数値は1996年6月の統計開始から最多の数値であり、新型コロナウイルスの影響が雇用を悪化させている。
業種別にみると、卸・小売業では36万7000人、宿泊・飲食店業では21万8000人就業者数が減少した。
韓国開発研究院が専門家20人を対象に行った調査によると、2021年の就業者数は5万人増加すると予想されている。しかし、昨年10月の調査では18万人増加するとされていることから、予想が大幅に引き下げられていることがわかる。
韓国の失業率は、今後の韓国経済の動向、新型コロナウイルスの感染状態によって、大きく変動するため注目が必要だ。
個人消費改善予想もGDP比が低い韓国
個人消費の実績見込み値は、2020年に4.3%減と大幅なマイナスを記録しているものの、2021年は2.4%増と見られている。しかし、新型コロナに対する不安や所得低下に対する懸念などにより、消費意欲の低下が低下しているため、2.4%増加するかは不透明だ。
加えて韓国は、個人消費がGDPに占めるウェイトが5割を切り経済協力開発機構(OECD)の中でも低いことから、GDP全体の引き上げ効果も低い。
半導体産業に依存した経済構造
半導体産業に依存した経済構造
設備投資の実績見込み値は、2020年は6.0%、2021年は4.7%の増加が見込まれているなど好調を維持している。
理由としては、韓国の産業は半導体に偏った構造となっており、その半導体事業がリモートワークの普及などの影響で好調であるため、設備投資が大きく伸びているようだ。
半導体は新型コロナの影響を受けにくく、投資意欲も旺盛であることから、今後も好調な状態が続くとみられている。
輸出の実績見込み値は2020年は4.2%減、2021年に関しては3.8%増と見通されているなど回復傾向だ。
しかし、韓国の主要輸出国である米国などはコロナの感染拡大により、経済の回復に時間がかかるため、韓国との輸出にも影響を与えるとみられている。
2021年は前年と比べて、プラス成長になるとみられているものの、予想された成長率に満たない可能性もあるなど楽観視できない状態である。
GDPプラス成長予想も「雇用なき成長か?」
2021年の韓国の経済成長率に関しては、2021年1月に国際通貨基金(IMF)が公表した資料の中で3.1%増、韓国銀行が3.0%増と予想しており、海外の調査期間なども2021年の韓国の成長率の見通しに関して上方修正している。
しかし、失業者が増加していることから「雇用なき成長」になるという懸念が実現する可能性が高い。
2021年1月、韓国総合株価指数(KOSPI)が史上初めて3000を突破した。しかし、韓国の株式市場では乱高下が発生している。こうした動きから経済専門家の中では、海外の投資家が韓国株式市場から離れ始めているとの見方もある。
2021年はプラス成長になる見込みは高いと言えそうだが、韓国経済の見通しは決して明るくはない。今後、韓国政府がどのような経済政策を実施するのか、国内外問わず注視されていくだろう。
参考サイト
第1部 第1章 第6節 (1)家計消費、物価の動向(消費者庁)
千歳 悠
4年ほど活動しているフリーライター。金融、IT、国際情勢など日々情報を追いかけている。趣味は読書と動画視聴。