ハーバード大教授が慰安婦の強制性を否定
ハーバード大教授が慰安婦の強制性を否定
現在、「慰安婦=性奴隷」を否定する説が世界中で論争を巻き起こしている。
騒動の元となったのは、米ハーバード大のJ・マーク・ラムザイヤー教授が「インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス」に掲載した論文「太平洋戦争における性契約」(Contracting for sex in the Pacific War)である。
その内容が慰安婦の強制性を否定するものであったことから、韓国や中国をはじめ、世界各国の研究者らから非難が相次ぐ事態となったのだ。
ラムザイヤー教授「問題は朝鮮の募集業者にあった」
では渦中の論文はどのようなものなのか。
論文におけるラムザイヤー教授の主張は要約すると次の通りである。
・日本軍は、東アジアに進軍したころ(1930年代~40年代)、現地で性病が蔓延することを避けるため、各地に半公式の売春宿を民間業者が設置することを促した。
・売春婦は業者によって主に日本と朝鮮から集められ、軍と提携する売春施設を「慰安所」、売春婦を「慰安婦」と呼ぶようになった。
・海外の慰安婦は生命などへのリスクがあるが、その代償に慰安婦は高報酬を得ていた。
・女性は慰安所と任期契約を締結し、多額の前借金(ぜんしゃくきん)を受け取って戦地に赴任。契約満了もしくは期限前に前借金を全額返済して故郷に帰った。
・朝鮮には固有の問題があった。欺瞞的行為で女性を欺く悪質な労働者募集事業者がたくさんいた。売春婦だけでなく工員も募集の対象となっていた。
・朝鮮や日本の政府が女性たちに売春するよう強要したのではないし、日本軍が不正な募集業者に協力したわけではない。業者がもっぱら慰安婦募集を行っていたのですらない。問題は、数十年間にわたり、若い女性たちをだまして売春宿で働かせてきた朝鮮内の募集業者である。
世界各国で論文撤回を求める動き
このようにラムザイヤー教授の主張は「慰安婦=売春婦」と規定し、韓国や中国などが主張するような強制的なものではなかったというものである。
「定説」を真っ向から否定するものであったことから、世界各国の研究者らから「歴史的事実を無視している」という反論が寄せられるに至ったのだ。
たとえば、日本では3月10日、慰安婦問題の学術サイトを運営する市民団体「ファイト・フォー・ジャスティス」など4団体が共同声明を発表。ラムザイヤー論文では慰安婦をめぐる日本軍の主体的な関与を示す史料やその他の先行研究が無視されており、事業者と慰安婦の契約書も提示されていないなどと反論。論文の撤回を求めた。
韓国や中国でも「歴史の歪曲」と報じられており、特に韓国の大学では論文撤回を求める動きが活発化している。
その他、米国・AP通信が「ラムザイヤー教授の主張が大きな論争を引き起こし、日韓の政治対立を強めた」と報じるなど、欧米諸国でも関心が寄せられている。
「ラムザイヤーは親日分子」北朝鮮メディア
以前から日本の植民地支配を厳しく糾弾してきた北朝鮮も、ラムザイヤー論文を非難する声明を出している。
対外宣伝メディア「朝鮮の今日」は3月2日、社会科学院歴史研究所室長との対談記事を掲載し、「過去の犯罪を隠蔽しようとする日本の反動勢力の恥知らずで不道徳な妄動を支持、加勢しただけでなく、日本軍の性的奴隷被害者を自発的な売春婦と呼んで侮辱した」と批判。
さらに、ラムザイヤー教授が日本の勲章を受章しており、過去に関東大震災における朝鮮人大虐殺を歪曲した論文も作成したことがあることを紹介した上で、「徹底した親日分子」であると指摘している。
ラムザイヤー論文は、日本の指導者の見解に寄り添う主張だと糾弾したのだ。
このように非難が相次いでいる論文だが、今のところラムザイヤー教授側に論文を撤回する動きはなく、今後の発言などに注目が寄せられる。
八島 有佑