「砂糖と食用油が枯渇。電力不足も深刻」
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)は2月24日、平壌のチェコ大使館の話として、一次的に平壌大使館を閉館すると伝えた。
先日、ロシアの外交官一家8人が陸路で34時間かけて国内移動し手押しトロッコで出国したことがニュースとなったが、 RFAによると、現在、平壌で活動を継続している大使館は、ポーランド、ルーマニア、ブルガリアとなると伝えている。
チェコ大使館関係者は、2月上旬、RFAに対して「砂糖と食用油がなくなり、電力状況も悪化している」と現地状況を話している。
砂糖生産ゼロの朝鮮半島
砂糖などの調味料が不足していることは、中朝国境の商売人の話として昨年秋頃から聞かれていた。特に砂糖は、北朝鮮だけではなく、韓国でも国内生産がゼロのため、韓国は砂糖を粗糖として輸入に100%依存している。北朝鮮は、ほぼ中国から砂糖として輸入している。
北朝鮮は、砂糖が枯渇すると、どうにもならないことが分かっていたので、昨年7月に韓国政府が北朝鮮に対して砂糖とビールなどを物々交換を提案して、6月末に発表前に北朝鮮の開城高麗人参貿易会社と契約を結んでいたが、その後、同社が国連制裁対象リストに含まれていることが契約後に判明するというお粗末な調査力を露呈して砂糖の物々交換案は破談していた。
2月、3月がもっとも食糧事情が厳しい北朝鮮
北朝鮮の食糧事情に詳しい専門家によれば、北朝鮮の食糧事情がもっとも悪化するのは、毎年、旧正月(ソル)明けから3月にかけての2か月となると指摘されていたが、その通りになっているようだ。
砂糖同様に北朝鮮ではかかせない調味料が酢なのだが、酢は穀物を原料にしており、国内生産ができる。しかし、昨年の食糧生産不足が影響し、酢の生産へ回せる余裕ないのかもしれない。
ちなみに、北朝鮮の酢は日本の一般的な液体の酢と違い粉末酢で、それを溶かして液体の酢にして使っている。
台湾をめぐり関係が悪化している中国とチェコ
ところで、チェコ大使館の関係者は、どうやって出国するのだろうか。北京、瀋陽への空路定期便は停止したままなので、普通に考えると、新義州まで鉄道か自動車を使い国内移動し、北朝鮮を出国し、中朝友誼橋を自動車か徒歩で渡り中国入国というルートになるだろう。
中国入国後、丹東の指定ホテルでの2週間の強制隔離が待っているが、外出ができない隔離生活とはいえ、(味は別として)食べるものには困ることはない。
中国は外交官でも隔離対象としている。そのため、チェコ大使館関係者も隔離されるとみられるが、彼らは理不尽な扱いを受ける可能性が高い。
なぜなら、チェコと中国は台湾をめぐり関係が悪化しており、政治的な理由で報復される懸念があるからだ。もしかすると、チェコはそれを念頭に中国ではなく、不便で時間はかかるがロシアへ出国という手段を選択するかもしれない。