「焦点は北朝鮮」表明後に米空軍がICBM発射実験
「焦点は北朝鮮」表明後に米空軍がICBM発射実験
米空軍の主要組織である「AFGSC(地球規模攻撃軍団)」は、2月23日午後11時49分(西海岸標準時)にカリフォルニア州にあるバンデンバーグ空軍基地から大陸間弾道ミサイル(ICBM)「ミニットマン3」(非弾頭)を試験発射したと発表した。
ジョン・ハイテン米統合参謀本部副議長は同日、ワシントンのシンクタンク「国際問題研究所(CSIS)」主催のオンラインセミナーで、「米国のミサイル防衛能力は、中国やロシア、イランではなく、北朝鮮に焦点を合わせている」と発言したが、その直後の発射実験となった。
地球規模攻撃軍団は発表の中で、「ミサイル発射計画は3~5年前に作成され、個々の打ち上げ計画は半年~1年前に開始する。発射実験は、世界の出来事や地域の緊張に対応するものではない」と説明している。
実際ミサイル発射計画自体は事前に決まっていたのかもしれないが、ハイテン副議長の発言直後の発射実験であっただけに、北朝鮮はより悪意的なメッセージと受け取る可能性がある。
北朝鮮がICBM発射実験再開の可能性も
北朝鮮は2018年6月の米朝シンガポール会談での合意に基づき、ICBMの発射実験は行っていない。
金正恩総書記は1月に開催された第8回党大会で、「米国を主敵」としながらも「新たな朝米関係樹立の鍵は(対北)敵視政策の撤回にある」と訴えていた。
また、「北朝鮮の核保有は、米国など敵対勢力からの脅威から身を守るための自衛措置」という基本スタンスを示し、あくまで新バイデン政権の出方を待っている状況であった。
だが、今回、米国がICBM発射実験を行ったことを「敵対行動」と認識し、ICBM発射実験再開などの対抗措置に出る可能性も考えられる。
広島型原子爆弾の20倍以上の核弾頭を搭載できるミニットマン3
今回発射実験を行ったミニットマン3は、TNT火薬換算で最低でも300キロトン級核弾頭を3発装着可能とされている。
1945年8月6日広島に投下された原子爆弾「リトルボーイ」は15キロトン相当、9日長崎に投下された「ファットマン」は22キロトン相当とされているが、これらをはるかに上回る20倍以上の爆発力の核弾頭を搭載できるのだ。
さらに、飛行距離は1万2000キロ・メートル以上で、加えて、各弾頭は異なる標的を同時に攻撃可能とされている。
米国は訓練や開発のため、昨年中も繰り返しミニットマン3の発射実験を行ってきた。米国がバイデン政権に代わった今、北朝鮮にとっても非常に大きな脅威となっている。
MINUTEMAN III TEST LAUNCH DEMONSTRATES SAFE, RELIABLE DETERRENT
八島 有佑