中国市場へ依存度が高い韓国のカップ麺
2月6日、「辛ラーメン」の農心創業者である辛春浩(シン・チュンホ)会長が来月、取締役を退任すると発表された。高齢を理由に経営の第一線から退くようだ。
辛春浩会長は、昨年1月に死去したロッテ創業者の辛格浩(シン・ギョクホ、重光武雄)氏の実弟になる。農心は1965年にロッテグループの企業としてスタートし、1978年にロッテグループを離脱し農心と社名を変更している。
今や辛ラーメンは、韓国国内外で確固たる地位を築いている。韓国で発売されている即席麺は、150種類ほどあるが、辛ラーメンだけで国内シェア25%を占める。
農心の総売上で辛ラーメンが、どのくらいの割合を占めているかの数字は見つけ出せなかったが、全輸出の4割を辛ラーメンが稼ぐと報じられている。その輸出をさらに深堀りすると、農心単独ではないが、韓国から輸出される全インスタント麺の25%が中国となっている。
つまり、農心は辛ラーメン1ブランドへの依存度が高く、かつ中国市場への依存も大きいという2重のリスクを抱えている。
世界1の辛ラーメンブラックも辛ラーメン
先日、伝えた辛ラーメンが世界最高のラーメンに認定という米ニューヨーク・タイムズで選ばれた「辛ラーメンブラック」も辛ラーメンの上位ブランドで辛ラーメンであることは変わりない。
例えるなら、辛ラーメンがPCエンジンで、辛ラーメンブラックはPCエンジンスーパーグラフィックス(マニアック過ぎて伝わらないかもしれないが、興味がある人は要検索)。後者は、上位互換機種の兄貴分で、8ビットの家庭用ゲーム機PCエンジンとして扱われていた。
辛ラーメンブラックも辛ラーメンの1種であり、1ブランド依存であることは、やはり変わりない。
パラサイト特需で売れたチャパゲティとノグリ
このあたりのいびつさは、農心も自覚しているのか、第2、第3のブランドづくりに力を入れているようだ。
2月4日の韓国・聯合ニュースは、農心の「チャパゲティ」が韓国のインスタント麺では3番目となる年間売上2000億ウォン(約188億円)を突破し、「ノグリ」も1000億ウォン(約94億円)を達成したと報じる。
チャパゲティもノグリも韓国映画「パライサイト 半地下の家族」で話題となったブランドだ。いわばパラサイト特需と言っていい。そうすると、一度食べた消費者がファンとなり、熱烈なリピーターにでもならない限り、昨年と同じ売上を叩き出すことは、難しいのではないだろうか。
圧倒的に強い辛ラーメンをプロ野球の球団にと例えると、Aクラスを狙えるチームが農心として、辛ラーメンは、先発で20勝できる絶対エース的な存在。しかし、他の先発陣は5勝くらいの投手しかいない。もし絶対エースが怪我でもして離脱すると、チームはあっという間にBクラスへ転げ落ちるような感じだろうか。