2019年、11か国が人道支援を実施
2019年、11か国が人道支援を実施
北朝鮮は、国連の経済制裁だけでなく食糧不足にも苦しんでいる。そこへさらに新型コロナウイルスの影響も受ける三重苦に見舞われているのが現状だ。
2019年の国際社会全体の北朝鮮に対する支援額は合計3289万ドル(約34億円)程度であり、11か国が人道的支援を行っている。
こうした支援は2020年も継続して行われている。北朝鮮国民の生活支援につながっているのは間違いないだろう。
肥料や食糧支援を実施した中国。1000万ドル分の栄養強化ビスケットを支援する韓国
中国は北朝鮮に対してすでに肥料を55万トン、食糧を50万トンから60万トン以上支援するなど異例な規模の支援を行っている。
韓国も昨年6月に南北共同連絡事務所の爆破などがあったものの、「国連世界食糧計画(国連WFP)」を通じて、北朝鮮に1000万ドル(約10億3000万円)の人道支援を実施するとしている。
1000万ドル支援の大部分は、栄養強化ビスケットの形で支援される見通しで、今年の早い時期には実施される予定だ。
国連WFPが支援を提案
また、国連WFPは韓国を含む10か国ほどに対して、北朝鮮への食糧支援についての提案書を送っており、ノルウェー、カナダ、スイス、スウェーデン、ロシアなどが応じている。
北朝鮮支援を新たに実施すると表明した国の支援内容を見てみよう。
まず、韓国政府は、人道的分野の対北朝鮮支援を継続する意思を明らかにしている。
ただし、文政権発足後、政府予算である南北協力基金が投入された対北朝鮮人道支援などの多くが新型コロナウイルスの影響などにより、北朝鮮内での分配が十分にされているか確認できない状態となっている。
対して北朝鮮は、韓国からの物資を直接受取ることを拒否している。結果、回避策として「3者間契約」という中国業者が仲介する契約が増加し、分配の不透明性がさらに高まったと指摘されている。よって、他の国よりも韓国の支援は、届きにくい状況と言えるだろう。
ロシアは、新型コロナウイルスの影響で北朝鮮が経済的に苦しい立場に陥っているとし、北朝鮮に対して中断していた石油製品の輸出を再開した。加えて、小麦2万5000トンを供給(2020年2回)するなど伝統的な友好国として存在感を示しているようだ。
支援国の中心であり国境を接する中ロの思惑
中国は、米国との対立が鮮明化している背景があり、北朝鮮と親密な関係を築き中国寄りに引き入れて米国を牽制する狙いがあるとみられる。
ロシアは、北朝鮮の金正恩体制を維持したいと考えている。そのため、北朝鮮に対する限定的な制裁には参加しても、圧力強化に対しては難色を示し反対している。
ロシアが制裁強化に消極的な理由は、もし、北朝鮮の体制が崩壊すれば、大勢の北朝鮮難民が発生し、ロシアに流入する可能性が高いと考えているからだ。
北朝鮮が崩壊するような事態が発生すれば、同時にロシア国内の情勢が不安定になる可能性も否定できず、難民流入と内政要因でロシアが北朝鮮を支援する理由になっているとみられる。
韓国は、2018年9月をピークに北朝鮮と良好な関係を築けていたものの、現在の関係は悪化し、関係改善の糸口はいまだ見えていない。韓国政府としては、継続的な支援を行うことで、北朝鮮との関係を改善させたいという思惑が見て取れる。
各国が支援を行う背景には、こうした思惑が見え隠れしている。
千歳 悠
4年ほど活動しているフリーライター。金融、IT、国際情勢など日々情報を追いかけている。趣味は読書と動画視聴。