この1年間で3人の中国人が国境で射殺?
この1年間で3人の中国人が国境で射殺?
19日、韓国の『朝鮮日報』は、中国吉林省の集安で北朝鮮へ越境した中国人男性を殺害したことが18日までに明らかになった報じた(参考 【独自】北朝鮮軍、今度は鴨緑江を渡った中国人を射殺)。
記事よると信じがたいことに昨年5月と7月にも中国人が北朝鮮の国境警備兵に射殺されており、新型コロナウイルス感染症対策で国境封鎖が始まったこの1年間だけでも合計3人の中国人が中朝国境で殺されていることになる。
今回、殺害された50代男性は、中国南部から集安へ観光で訪れていたという。男性は鴨緑江を渡り対岸の北朝鮮側の慈江道満浦で銃殺されたとのこと。記事では男性が泥酔していたと伝えており亡命等ではなく、誤って渡った可能性が高い。
中国徹底した情報統制か
昨年9月末、北朝鮮による韓国人公務員の海上射殺事件が韓国で大問題となったことは記憶に新しい。2017年に誕生した文在寅政権は、一貫して北朝鮮寄りの宥和政策を実施しているが、さすがに国内世論の押されて北朝鮮を批判する声明を出している。
今回の中国人殺害が事実かは明確には分からない。中国の官製報道はもちろん、吉林省の地元メディア、集安市人民政府のサイト、SNSなどを検索する限りは確認できない。徹底した情報統制を敷いているとみられる。
集安に比較的に近い遼寧省丹東や瀋陽在住者に聞いても中国国内で報じられていないのであろう、当然ながら知らなかった。
朝鮮日報は、この中国人殺害事件の影響で中朝国境の警備が強化されて集安と満浦双方で緊張が高まっていると結ぶ。
例年にない極寒に襲われるかつての高句麗の首都
集安は、日本の歴史の教科書にも登場する広開土王碑がある場所として知られる。かつては高句麗の首都が置かれ427年に現在の平壌近郊へ遷都するまで高句麗の首都として栄えた歴史を持つ。
集安気象台の「微博(ウェイボー)」投稿を見ると、集安も昨年末から例年にない厳しい冬を迎えているようだ。本日19日は最低気温マイナス26度、最高気温マイナス9度で曇り、終日北風と予報発信している。また、集安交通大隊(交通警察)の公式アカウントでは、路面凍結によるスリップ事故などに注意をと呼びかけている投稿を発信している。
昨日の集安在住者と思われるウェイボー投稿には、「幼少期を思い出す寒さだ」などの投稿が確認できるので、今冬の集安は地元の人間にとっても特別に寒いようだ。
投稿を追っていくと、凍った池や鴨緑江の浅瀬の写真も確認できるので、鴨緑江にできた氷に乗って遊んでいたら気づかずに対岸へ接岸してしまい上陸してしまったというのもありえそうだ。
市街地が対面になっていない集安と満浦
記事では銃殺場所は書かれていない。というのも集安と満浦は、丹東と新義州のように鉄道駅が面しているわけではないので、市街地の場所が若干ずれている。集安の市街地から見て満浦の市街地は北東に位置し対面ではない。
集安の市街地で、鴨緑江や北朝鮮側を見学できるように整備されているエリアの目の前には北朝鮮領の中洲が横たわっている。
他の北朝鮮領の中洲でも同様であるが、実効支配を続けるために居住者はいなくても国境警備兵や明るい時間帯だけ農民風常駐者を置いたりしている。殺害された中国人男性は中洲へ上陸したのかもしれない。
いずれにしてもこの殺害報道が中国で報じられることはなさそうだ。
観光地として整備されている中朝国境。目の前の茂みは横たわる北朝鮮領の中洲