金正日総書記の死去から9年
北朝鮮官製メディアは17日、金正恩委員長や朝鮮労働党幹部らが錦繍山太陽宮殿を訪問したと報じた。12月17日は金正日総書記が死去してから9年目となる。
『労働新聞』が1面で報じた写真には金与正氏の姿も確認されている。17日の紙面に掲載されたということは訪問は日付が変わった深夜か、前日などとみられる。
北朝鮮専門ニュースサイト「NK NEWS」は、金正恩委員長の動静が報じられたのは11月は2回だけだったと伝えており、8、9月の台風被害での重ねた現地視察以降、金正恩委員長の動静を伝える報道は減っていることが分かる。
スルーする中国国営メディア
本件は中国SNS「微博(ウェイボー)」でも記事投稿されているが、取り上げているのは、韓国と香港、シンガポールメディアで中国官製メディアの記事は確認できない。
報じた中で特に多くのコメントが入っているのは、シンガポールの中国語新聞『聯合早報』で、61件のコメントが書き込まれている。
聯合早報は中国語の日刊新聞ではシンガポール最大部数を発行する国営メディアだ。
投稿記事へ書き込まれたコメントを見ると、「皇帝廟だ」、「全人民の尊敬を集めている」、「献身的」など肯定的なコメントもあるが、批判的なコメントが8割ほどと目立つ。
個人批判が多く書き込まれる
シンガポールメディアとはいえ、中国よりもはるかにインターネット規制が緩いシンガポール人がわざわざウェイボーを見て書き込むとは考えづらいので書き込んでいるのは中国人だと思われる。
シンガポールは中国大陸以外では世界で唯一簡体字を採用して教育している国なのでアカウント名を見ただけでは中国人かシンガポール人の区別はつかない(厳密に詳細を見ればすぐに分かるが)。
多数を占める批判的なコメントには、北朝鮮の体制非難や金正恩委員長の体型、金与正氏についての個人批判とも受け取れる内容も確認できる。
個人崇拝や独裁に神経を尖らせつつ韓国を叩く
一方、中国官製メディアは取り上げていない。中国政府は個人崇拝や独裁について非常に神経を尖らせて国内報道を監視している。習近平国家主席が個人崇拝や独裁体制を強化している現状に相関関係があるかは不明であるも、中国人は毛沢東時代の反動で個人崇拝や独裁をよく思わない風潮が根強い。しかし、皮肉にも現代の習近平政権が毛沢東の再来と言われるような独裁体制を強めているため中国政府へ中国人から不満が向かないように今回の北朝鮮のニュースは取り扱わなかった可能性がある。
他方で中国官製メディアは韓国政府や芸能人、文化などに対して批判的な論調を強め増やしており、そこへ多くの韓国批判が書き込まれている。
選挙や世論調査が存在しない中国政府は世論が読めない。そのため中国政府は、ガス抜きを兼ねて意図的に批判を誘発させる韓国報道を増やすことで世論をくみ取りつつ新しい対韓戦略への取っ掛かりにしたいという思惑を持っていそうだ。