自動車3台で来店した北朝鮮領事館関係者
11月末、中国瀋陽から丹東へ打ち合わせのため訪れていた朝鮮族企業経営者の李さん。丹東の朝鮮族企業との打ち合わせ後、昼食にと訪れたのは縁辺出身の朝鮮族が経営する朝鮮料理店。今年夏前に移転オープンしたばかりのきれいで評判のいい中規模店だ。
丹東駅近くから移転したのは丹東新区と呼ばれる丹東市南部の新しい行政区。新区は建設が再開された「新鴨緑江大橋」を中心に都市計画されたと言っても過言ではないエリアとなる。
李さんら4人で食事をしていると、自動車3台で来店した一行がいた。やってきたのは北朝鮮の在丹東領事事務所の関係者たちだった。
丹東新区には在丹東領事事務所も2015年ごろに丹東駅近くから新区の新鴨緑江大橋下を直進した少し先に広がる展示会場や高層ビルが立ち並ぶエリアへ移転していた。在丹東領事事務所は、在瀋陽総領事館の出張所扱いとされている。
高いから?北レスには行かない
李さんと一緒にいた丹東企業関係者は在丹東領事事務所と面識があり紹介してもらい少し話をしたという。
李さんによると、スタッフ10人ほどで食事に来ていて「いつも全員で一緒に食事をしています。ここは近くて美味しいですよ」と話していたそうだ。新型コロナウイルス感染症対策で2月上旬以降、中朝国境は封鎖されて往来ができない状況が続くが、一時帰国していた事務所関係者はその前に丹東へ戻ってきたようで、以降、そのまま帰国せずに中国にいるとのこと。
李さんは、「朝鮮食堂(北朝鮮レストラン)には行かないんですか?」と尋ねると、「いや、遠いし高いですからね」と苦笑していたとのこと。
移転した在丹東領事事務所から丹東中心部まではおよそ10キロメートル、自動車で20、30分はかかる距離にある。
北朝鮮レストラン(北レス)は、いくら領事館が経営に関与しているとは言え、建前上、国連制裁で中朝合弁企業が禁止されたので中国企業経営となっているので、“ツケ”など以前ほどの融通が効かなくなっているとも考えられる。
来夏正式開通と言及した新鴨緑江大橋
事務所関係者は、帰国したくても帰れないと愚痴をこぼしていたようだが、帰国したら厳しい隔離や下手したら解任されて地方へ追放されるかもしれないで、帰国できないことで内心ほっとしているのではないかと李さんは話す。
丹東新区は、新鴨緑江大橋の無期限開通停止によって都市計画が大きく狂い、新大橋開通を見越してオープンさせていた北朝鮮免税店街などが撤退するなど寂れていたが、在丹東領事事務所関係者の口からも新大橋は来年夏に正式開通するとの言及があり新たな中朝貿易の大動脈誕生に期待を感じさせたとのことだ。