タイの観光業界や観光地へ壊滅的な影響を与える新型コロナ
タイの観光業界や観光地へ壊滅的な影響を与える新型コロナ
新型コロナウイルスの影響はいまだ甚大で、観光収入が多い東南アジア各国は大打撃を受けている。世界的に見ても人気の渡航先であるタイは、政府が厳しく外国人の入国や外国から帰ってくるタイ人の出入国を管理しているため、観光業界だけでなく、人気観光地は壊滅的な状況になりつつある。
前年同月比16万人以上激減したタイ入国の韓国人
タイのイミグレーション警察が発表する出入国者の統計も、今年半ばくらいまではビザごとの出入国者数が提示されていたが、現在は航空機や船舶の乗組員などが中心になっているため、合計人数しか表示されていない。最新の統計によれば、2020年10月度の出入国者上位は下記のようになっている。
(国籍別)
1位 タイ 入国87,255人:出国81,255人
2位 マレーシア 入国12,084人:出国12.203人
3位 フィリピン 入国5,596人:出国6,147人
4位 中国 入国3,958人:出国4,231人
5位 日本 入国2,480人:出国1,928人
タイはもともと国外在住だった者が帰国し、また海外就労のために出国するケースが多いようだ。これまで入国者数のランキングで上位常連だったラオスは10月の入国者はわずか256人、出国は2866人となっており、タイ国内で仕事がなくなって出国しているとみられる。ただ、今年度の1月から10月までの入国者数合計ではタイ国籍者に次ぐ2位になっており、外国籍では一番多い。
通常時は日本よりも渡航者が多い韓国は10月の入国者はたった933人に留まっている。各国のランキングでは10位前後といった規模だ。前年同月には16万2000人が入国しているので、大幅減といったところ。
露骨な観光収入稼ぎの特別観光ビザ始まる
中国は今年9月と比較しても入国者数はあまり変わっていないが、これまで観光目的の入国だけでも月に80万人はいた点を見れば大幅減ではある。しかし、今後、中国籍の観光客は増える可能性が少なくない。というのは、タイ政府が10月20日から特別観光ビザ(STV)の発給を始め、同日第一便として40人の中国人がタイに観光客として入国したのだ。実に7か月ぶりの海外からの観光客受け入れで、その後も続々と中国人が入国している。
タイは政情不安で観光に影響が出始めるとビザ免除をしたり、ビザ料金を下げる傾向にある。今回はSTVの新設で観光収入アップを目論む。このビザは入国時に自費による14日間強制隔離が必須ではあるものの、タイ国内で90日ごと、3回までの延長が可能で、最大で270日、タイ国内に滞在できる。
ただ、発給には条件が各種あり、もっとも重要な部分は、申請と延長の際、滞在期間中1か月につき50万バーツ分(約175万円)の預金証明を提出しなければならないことだ。つまり、比較的に経済的余裕がある人たちに向けたビザになる。
観光収入を得るための露骨な手段と言えるが、これが不安要素もあって中国人にしか普及しないのではないかという声がある。たとえば日本人や韓国人の場合、270日も遊んで暮らせる余裕が一般的な会社勤めにはないという点は大きい。
韓国や日本人は特に増えない可能性が高い
韓国や日本人は特に増えない可能性が高い
さらに、発給はタイ保健省が定める低感染リスク国に限られることだ。10月20日に開始され、当初は日本も対象国に入っていたのだが、10日後の30日に保健省は日本の感染リスクを中クラスに引き上げてしまった。日本政府は同日にタイをランクダウンさせて入国手続きの簡素化を決めたのだが、タイ政府は逆の対応となった。そのため、少なくともリスク国のリストが更新される11月15日までは日本人はSTVの取得ができない。
韓国に関してはSTV発表時には対象国に入っているものの、在韓タイ大使館のサイトを見るとSTVに関する記述が見当たらなかった(執筆時)。在日タイ大使館でもSTV申請をするなら普通の観光ビザ取得を勧めてくるという情報もあり、各国大使館で対応が違う。
要するに、タイの外国人観光客受け入れの対策はまだ迷走しており、中国人以外の入国人数は今後もしばらく伸び悩むことになりそうである。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)など。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)