鴨緑江に面した軍事公園

鴨緑江に面した軍事公園

志願軍公園開園を伝えるCCTVの記事 出典 CCTV.com

鴨緑江に面した軍事公園

 22日、中朝国境の丹東に「志願軍公園」なる公園が開園したと「中国中央テレビ(CCTV」)」が伝えた。

 志願軍公園は、丹東駅北、鴨緑江に面した公園を半年かけて改修したものだ。13ヘクタールある園内には7つのテーマで構成されていてそれぞれ鴨緑江を渡る志願兵や軍用水筒、兵士の立像などのモニュメントが設けられている。軍事公園といったところだ。

 CCTVは、アメリカの侵略に立ち上がり北朝鮮を助けるために志願兵たちが鴨緑江を渡った70周年を記念するものだと伝え、「この公園は『抗美援朝』戦争の英雄的な都市丹東の歴史と文化にふさわしい」と紹介している(美=中国語で米国の意味)。

抗美援朝精神と志願兵を繰り返す意図

抗美援朝精神と志願兵を繰り返す意図

鴨緑江の中洲は北朝鮮領土が多い(虎山長城から撮影・2006年)

抗美援朝精神と志願兵を繰り返す意図

 ここ最近、中国の官製報道を中心に抗美援朝精神と志願兵という言葉を繰り返し用いて強調しているように感じられる。

 前者はあくまで当時の精神であり現代の歴史観とは違う。後者の志願兵とは、朝鮮戦争当時、毛沢東が、中国人民解放軍東北辺防軍を中国人民志願軍と命名したことに由来する。志願兵、つまり、あくまで自らの意志で戦地へ赴いた軍隊である。

 よって、朝鮮戦争参戦は、国家として望んだ戦争ではない。参戦したのは国軍(正確には中国には国軍は存在せず人民解放軍=中国共産党の党軍が実質的に国軍扱い)ではなく「自衛戦争」だったということを内外へアピールしたい中国政府の狙いがありそうだ。

 22日に開園した公園もその1つだろう。CCTVの報道は最後に、志願軍公園は中国人の例え巨大な敵であっても果敢に立ち向かい大きな犠牲を払っても国家と平和を守り抜く偉大な抗美援朝精神を継承していく愛国的な教育拠点として発展していくだろうという趣旨で結んでいる。

公園対岸はゴルフコースだった珍珠島

 ちなみに志願軍公園がある場所は、KWTで紹介した「かつて存在した北朝鮮にもっとも近いゴルフ場 鴨緑江中洲にあった幻の珍珠島ゴルフ場」の珍珠島の対岸にあたる。

 中国語の記事では公園を改修したと書かれているが、この場所は、元々はプレイするゴルファーたちがプレイ前後に散歩を楽しむような場所だった。

 ゴルフ場閉鎖後は、クラブハウスを改修して現在のホテルとなり、ホテルを訪れた客向けの簡素な庭園のように整備されていた。

 しかし、どうせならゴルフコースがあった鴨緑江に浮かぶ中洲である珍珠島を志願軍公園にしたほうが歴史教育により最適な場所だったのではないだろうか。なんせ100メートルも離れていないすぐ隣の中洲は北朝鮮領土だ。実際には中国人民志願軍はこの付近から鴨緑江を渡ったは定かではないが、より国境のリアリティが感じられるのではないかと思う。

 今後、丹東には「抗美援朝記念館」や志願軍公園のような反米スポットが増えていきそうだ。

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