中国が反発したBTSメンバーのスピーチ
中国が反発したBTSメンバーのスピーチ
世界的な人気を誇る韓国の男性7人グループ「BTS(防弾少年団)」が今月上旬にアメリカの非営利団体からの受賞コメントで朝鮮戦争へ言及したところ、中国が反発し、BTS 批判へ発展した。
日本では2018年のBTS原爆Tシャツ騒動でも話題となったり、つい先日も所属事務所が韓国取引所へ上場し株価の時価総額が一時11兆8800億ウォン(約1兆900億円)なるなども話題となった。
今回の中国が反発した騒動の元となったスピーチ内容を読んでみると韓国やBTSをよく思わない人も含めた多くの人が問題に感じないのではないだろうか。朝鮮戦争は、韓国がアメリカを中心とした連合国軍とともに北朝鮮と支援した中国、ソ連と戦火を交えたわけだ。韓国の立場として当然の内容で、しかも、アメリカの団体の賞であることを考えると何ら問題ないと思われる。
環球時報があおり中国SNSが大炎上
しかし、中国政府はこれを好機ととらえたようだ。中国政府は25日の朝鮮戦争中国参戦日へ向けて反米機運を盛り上げる大キャンペーン中だからだ。
今、中国のSNSでは朝鮮戦争、中国が朝鮮戦争で北朝鮮を支援せざるをえなかった原因はアメリカにあるといったアメリカを批判し、中国を肯定する記事であふれている。
今回のBTSの発言を最初に問題視して取り上げたのは官製の『環球時報』。最初の内容は、あくまで環球時報、中国政府の主張ではないという体裁を取るためか、1中国人BTSファンが「中国人として許せない。私はBTSのファンクラブを止める」という声を引用する形で伝えている。実はこれ中国官製メディアの常套手段だったりする。
その後、中国政府の狙い通りSNSが大炎上した。「微博(ウェイボー)」で注目記事にBTS関連の記事が並び、“韓国”で検索するとBTSや韓国批判の投稿で埋め尽くされた。
中国政府は中国人世論がつかめない?
この影響でBTSとのコラボ商品やCMで起用している「サムスン」や「ヒュンダイ」が該当商品やCMを取り止めている。
しかし、騒動から数日、検索すると嘘みたいにウェイボー上の批判記事は一掃されている。中国政府がやりすぎたと感じたのか裏で規制した可能性がある。
選挙もなければ、政権への批判や論評も許されない中国では、日本でいう政権支持率調査なども存在しない。これには弊害も指摘されており、中国政府は中国人の世論の動きがつかめないという。そこで中国政府はウェイボーなどのSNSを世論キャッチのリトマス試験紙にしているとされる。官製世論をしかけて盛り上げて、動向を見て全面規制して強制的に鎮める。こんな方法で世論を作り出して、それを一般中国人の意志と国際社会へ説明しているのだ。
今回のBTS騒動も反米材料、内政に利用できるとしかけたのだろうが、なにか中国政府にとって不都合があったのか早々に幕引きを図ったようだ。
結果、BTSを通じて中国政府のリアルをまた少し知る機会となった。