砂糖と大同江ビールの物々交換を前向き検討
日本のビールが消えた韓国で再び「大同江ビール」が飲める日がまた一歩前進か、と韓国人のビール党らは複雑な思いをしながらも期待している。
6日、韓国統一省は「世界食糧計画(WFP)」を通じて北朝鮮へ1000万ドル(約10億6000万円)の人道支援を実施するすると発表した。
李仁栄(イ・インヨン)統一相は、さらに北朝鮮との物々交換による小規模交易も検討している。韓国政府は、交易を現金取引で行えば、兵器開発などへ使用される恐れがあるが、現金が移動しない物々交換では、国連制裁には抵触しないと判断しているようだ。
この物々交換案は、KWTでもお伝えしたが、現在は、韓国から砂糖、北朝鮮からは大同江ビールとを交換する案が有力となっている。当初は、韓国側から米や医療品なども含まれていていたが、2019年、韓国は北朝鮮へ米の人道支援を申し出るも断られた経緯がある。
砂糖が生産できない朝鮮半島
なぜ砂糖と思う人もいるだろう。北朝鮮は気候的に砂糖の原料の1つであるサトウキビの生産ができない。もう1つの代表的な原料であるてん菜(ビート・砂糖大根)は寒冷地で栽培できる。世界一の生産国はフランス、2位ロシア、3位ドイツ(2014年・「国際連合食糧農業機関」)といずれも北朝鮮よりも高緯度にある国々だ。しかも、北朝鮮と同緯度の中国吉林省などでも生産されている。日本では北海道が産地として知られる。
そう考えると、北朝鮮でも気候的にはてん菜は生産できそうだが、農業技術の問題かまったく生産されていない。しかも、同じ朝鮮半島の韓国でも同じくまったく生産されていないので気候や技術だけではなく、土壌など別要因もありそうだ。
6月末すでに南北で砂糖と酒との交換契約済み?
6月末すでに南北で砂糖と酒との交換契約済み?
北朝鮮では砂糖は祝祭日などの特別配給などで配られるなど貴重品とされる。その貴重な砂糖を韓国が大同江ビールとの交換で提供しようとしている。とは言え実は、提供する韓国でも国産砂糖生産はゼロで100パーセントを輸入に依存している。輸入国の内訳はオーストラリア(93%)、タイ(3.5%)、ブラジル(2.2%)となる(2017年・「農林水産省」)。
韓国は、サトウキビなど原料のまま輸入せず、粗糖として輸入し、韓国国内で砂糖へ精製する。製品としての砂糖の一部は中国などへ輸出されている。いわば加工貿易を行っているのだ。
さらに、韓国の「南北経総統一農事協同組合」は、6月末に北朝鮮の「開城高麗人参貿易会社」と北朝鮮の酒と韓国の砂糖を交換する契約をすでに結んでいることを明らかにしている。韓国は契約時に輸入禁止品目に該当しないことを確認したという。
(続く)
参考サイト
韓国の加糖調製品の生産および対日輸出動向(農畜産業振興機構)