1400kmを超える中朝国境
1400kmを超える中朝国境
2000年代前半、一部の特殊な旅経験を好む旅人で流行っていたのが「2か国同時立小便」。1420キロメートルほどの中朝国境で中国側から北朝鮮へ向かって立小便をすることだ。
現在、中国と北朝鮮の国境は白頭山(中国名 長白山)から流れる鴨緑江と豆満江(中国名 図們江)の2つの川で隔てられている。鴨緑江は黄海、豆満江は日本海へと流れ込む。
朝鮮族などに聞くと1970年代までは朝鮮族が北朝鮮。北朝鮮人が中国へと比較的に自由に往来していたようだ。そのため物理的な国境はあまり感じなかったという。
中国・北朝鮮の国境に鉄柵ができたのは21世紀になってから
外国人も多く訪れる丹東に鉄柵ができ始めたのは2005年ごろからと21世紀に入ってからとなる。徐々に鉄柵の距離が伸び、現在は、川幅が狭いところは、ほぼすべて鉄柵で覆われている。
4つのダムがある鴨緑江は流れているのか分からないくらい流れはゆっくりしている。またその名の通り透明度が低い水は緑色をしている。普段の穏やかさとは別に度重なる洪水が周辺住民を苦しめる暴れ川でもあったため戦前に満州国と朝鮮側でダムが計画され、水豊ダムのみが1944年(昭和19年)に竣工した。他は計画のみで工事が行われなかったが、日本が戦前に計画したダムも含め戦後3つのダムが完成している。
ダムの完成で鴨緑江の水量は調整できるようになり洪水頻度は大きく減ったと言われる。それでも、確認されているだけで1995年と2010年には大洪水が起こり両岸の丹東、新義州の市街地は越水して水没被害を受けている。
北朝鮮と中国領土へ同時に立小便
鴨緑江で洪水が起こるたびに上流から土砂が運ばれ、川の形を変え、川底は浅くなり、中洲を拡大させるなどしてきた。
結果、鴨緑江で独立していた中洲が、土砂の体積で川が埋まり中国側に接岸して一体化する場所が複数誕生している。そうして、丹東や南部の東港と陸続きだが、そこは北朝鮮領土という不思議な国境光景が生まれた。
これら接岸した中洲は鉄柵1枚で中朝が仕切られているだけだ。ここで中国側から立小便して北朝鮮側へ放尿すれば、北朝鮮と鉄柵を流れて中国側にと「2か国同時立小便」というお世辞にも品がいいとは言えない越境体験ができるようになったというわけだ。
丹東で鉄柵が完成する前は中国の国境警備兵が目を光らせており見つかると大変なので警備が手薄な場所情報がネット上でやり取りされていた。
ところが、2015年ごろには国境を警備する兵がほとんどいなくなった。表面的には国境警備が緩んだと勘違いするのであるが、事実は違うようだ。
超高性能カメラで厳重監視される中朝国境
中朝国境を取材するジャーナリストが、丹東の旅行会社や公安関係者などへ聞いた話によると、監視カメラの配置が済んだので人間が監視する必要がなくなっただけだという。
監視カメラはフルカラー動画で、数キロメートル離れた高台などに監視場があり、異常があれば数分で駆けつけられる体制が完成しているという。配置された監視カメラの動画を連動させると特定の被写体へフォーカスできる。録画動画を設定編集すれば、短時間でその人物や自動車などだけの詳細な行動映像が簡単にできるほどの高機能を誇る。
「これらの簡易版となるような監視カメラは中国の一般的なスーパーマーケットへも導入されています。技術者でもない1監視担当者が、わずか数分の操作で特定の人物だけの入店や店内での行動を鮮明に追った行動履歴動画を作り出したのを見せてもらい驚愕しました。国境警備で使われる監視カメラは国家機密クラスなので、スーパーなどとは比較にならないくらいとてつもない高性能カメラでしょう」(前出のジャーナリスト)
丹東の旅行会社でも国境エリアでの立小便や北朝鮮側を刺激するような行為はトラブルの元なので絶対に止めてほしいと呼びかけている。