95%が中国経由で訪朝
現在、北朝鮮を訪れるためには、ロシアのウラジオストクからの空路週2便を除き中国経由となる。ウラジオストクからの高麗航空は欠航、運休も多いため推定であるが全体の訪朝者の95パーセントほどは中国を経由しての入国とみられる。
毎年、日本から200人ほどが各親善団体として友好訪朝している。友好訪朝とは、交流、対話促進を目的に観光客扱いではなく、北朝鮮から招待状(インビテーション)を受けて訪問することを指す。
中国当局が狙う「最適な日本人」とは?
毎年のように大規模訪問団を率いて訪朝する代表は、
「何が一番緊張するかって中国を通ることですよ。行きは必ず北京で1泊することになるので、北京滞在がもっとも緊張します。逆に(北)朝鮮へ入国すると安心するから不思議なものです。(北)朝鮮のほうが色々と柔軟に対応してくくれるので我々として楽なんですよ」(訪朝団代表)
各地の友好団体へ所属するのは、現役地方議員や元議員、大学教授、企業経営者、財界人などその地方の名士で構成されている。そのため、年齢は60代以上、社会的地位も高い人が多い。
友好訪朝団は、年齢が比較的に高く多忙な人も多いことから最短で移動できる北京経由での空路入国がほとんどとなっている。
「北京滞在中はホテルから外へ出ないように団員には口酸っぱく伝えています」(同)
中国のほうが緊張するのは、友好訪朝団の人たちが中国政府が狙う最適な条件を持ち合わせているだからだろう。ある程度、地位のある日本人を拘束する理由に中国がしばしば用いるのが回春容疑だ。俗に言う“ハニートラップ”もここに含まれる。
もし、単独でふらっとバーやカラオケなどへ行ければ、回春現場を押さえたなどを理由に拘束することが多い。拘束後は非公開にして面会も遮断するので本人の言い分は一切外へ漏れてこない。そのままスパイ容疑に切り替えることができれば中国政府としてはさらに利用価値が高まる。
香港空港トランジットエリアで拘束される事例も
香港空港トランジットエリアで拘束される事例も
7月1日に導入、施行された「香港国家安全法」で、中国当局による外国人管轄は、中国本土と香港において完全に一体化したと考えていい。
香港国際空港は、上海や北京、広州の空港では一部に限られているそのままトランジット(入国せずに別便への乗り継ぎ)できる。国際法上、どこの国も属さないと定義されるトランジットエリアでも中国本土とおぼしき私服公安に拘束されて取り調べを受け予定フライトへ搭乗できなかった日本人の事例もここ数年、増加傾向にある。
一般の観光客は、北朝鮮を出国して中国へ入国すると、こころなしか安堵を覚える人が多い。しかし、友好訪朝団にとっては、逆で、今後、中国滞在は、ますます針の筵(むしろ)状態になることが懸念される。