中国入国タイミングを狙い撃ちか
北朝鮮交流事業のマイケル・スパバ氏 中国でのVIP待遇から一転スパイ罪(1/2)の続き。
マイケル・スパバ氏が2018年12月上旬に北朝鮮から中国へ戻ったときの拠点は丹東だった。拠点を移動したのだろうか、スパバ氏は丹東到着直後にスパイ容疑で拘束されている。おそらく、中国入国タイミングを狙い撃ちされていたのだろう。
中国政府はスパバ氏がカナダ人という欧米から協力を得やすい立場を利用して何かしらの北朝鮮との橋渡しなり、プロジェクトのために利用していたと考えられる。ざんざん協力させておいて、「ファーウェイ」問題で、アメリカとの関係が険悪になった途端にいとも簡単に切り捨てた。その結果が、とてつもなく厳しい取り調べだと言われるスパイ容疑で拘束だった。
24時間無消灯・仰向け強制・面会禁止
中国にとっての正義とは、憲法や法律ではなく、憲法より上に君臨する時の中国共産党指導部の裁量で決まる。中国政府は中国人の協力者であっても突然、手のひらを返したように裏切るのが常だ。ましてや外国人ならさらに簡単にまるで紙くずのようにポイ捨てするだろう。
スパバ氏を公安案件でなく、国家安全局が取調べするスパイ容疑で拘束。スパイ罪で起訴したということは、カナダで拘束されているファーウェイ副会長の孟晩舟氏との人質交渉に利用するためだけはない気がする。
国家安全局の取り調べは、全員独房、24時間消灯なし、就寝時も仰向けで寝ることが要求され、寝返りをうつと強制的に仰向けに戻される。面会は、大使館指定の弁護士のみで家族、友人の面会は全面禁止。複数の関係者の話によると、さすがに拷問など身体的な暴力などは確認されていない。しかし、メンタルヘルスを崩壊させることを目的とした勾留環境であることは間違いない。
そんな悪環境にスパバ氏はすでに1年半以上いることになる。想像しただけでも恐ろしい。
日本人の例からも現在の中国でスパイ罪で起訴されれば、ほぼ100パーセント有罪となる。実に皮肉な話だが、有罪となり、刑務所へ収監されれば、刑務所は公安管轄となるので、国家安全局の取り調べ環境よりも格段に環境は改善すると考えられる。
カナダ→オーストラリア→ニュージランドと移り変わる投資・移住ブーム
中国政府がカナダ人であるスパバ氏を優遇して利用したのはどうしてだろうか。中国は2000年代前半、カナダとの関係強化政策で中国からの留学生や投資、移住者などが増えていた。結果、カナダ移住がブームとなり急増したため、カナダ政府は、危機感を覚えたのか移住へ制限をかけたことでカナダブームは終焉した。その後、同じような留学や投資、移住ブームは、オーストラリアへ。これも同じくオーストラリア政府に規制されたので、この5年ほどはニュージランドブームが起こっていた。
それもオーストラリアでの中国人スパイ事件や今回の新型コロナウイルスでの中国共産党政府への不信感でニュージランド政府は中国人の投資、移住規制へ乗り出す動きを見せ始めている。
目的は孟晩舟氏の米移送阻止
中国政府は、スパバ氏を本気で実刑に処する意志はないと思われる。目的は、孟晩舟氏のアメリカ移送を断固阻止することにある。そのためにカナダ政府を脅すための材料に利用していると考えられる。
カナダ政府が孟晩舟氏をアメリカ移送せずに国外追放などにすれば、中国政府は、人道上の観点や両国関係を考慮してなど実にもっともらしい理由をつけてスパバ氏と同時期に拘束されているマイケル・コブリグ氏を釈放し国外追放にするとみられる。
過酷な環境での拘束が続くスパバ氏らの身体の無事はもちろん、メンタルヘルスに甚大な障害や後遺症が残るのではないかと懸念される。1日も早い解放を願いたい。