裁判敗訴後も営業を続けるも新型コロナが襲う
裁判敗訴後も営業を続けるも新型コロナが襲う
昨年、KWTでもお伝えしたドイツの首都ベルリンにある北朝鮮大使館内の建物を利用していたホテル(ゲストハウス)。このホテル営業が5月末に終了したことをドイツメディアが報じている。
「シティホステルベルリン」は、ベルリン中心地という好立地にある北朝鮮大使館内の建物を改装したバックパッカー向けホステルとして人気だった。
しかし、 シティホステルベルリンは、国連制裁(北朝鮮制裁決議2375)に抵触することが問題となり、ベルリン市は、同ホステルを運営するトルコ系企業「EGI GmbH」に対してホステル閉鎖を命じていた。それに対しEGIは不当と反発し閉鎖命令の無効を訴える訴訟を起こしていた。
2020年1月29日、ベルリンの行政裁判所はEGIの訴えを却下した。しかし、その後もシティホステルベルリンは営業を継続していた。
その後、新型コロナウイルスが襲いかかる。外国人観光客は入国停止となり、ベルリンもロックダウンされてシティホステルベルリンは開店休業状態となる。3月29日、「共同通信」の取材に対し、今日の宿泊客は1人だと答えている。
大使館のテナントビジネスも5月29日に営業終了
大使館のテナントビジネスも5月29日に営業終了
各国が新型コロナウイルス蔓延で感染対策に奔走したため話題になっていなかったシティホステルベルリンは、5月29日、完全閉鎖したと、「AP通信」がドイツ当局担当者の話として伝えた。
なお、公式サイトは現時点でも残っている(予約ページは閉鎖)。
シティホステルベルリンは、北朝鮮と同じ東側陣営だった東ドイツが1960年代に提供した広大な北朝鮮大使館敷地内あるソビエトスタイルの無機質な5階建ての建物をトルコ系企業へ貸し出していた。つまりテナントビジネスを展開してたことになる。
ドイツに限らずヨーロッパ主要国のホテルは高い。星なしホテルの1ベッドルームでも1泊40ユーロ(約4900円)以上はする。しかも、その中でもドイツのベッドは日本人でも窮屈に感じるほど小さく部屋も日本のビジネスホテルのシングルルームを一回り大きくしたくらいが一般的な広さとなる。周辺国と比べても狭い。日本人よりも大柄なヨーロッパ人は狭く感じないのだろうか。
ブランデンブルク門へ徒歩圏内の旧東ベルリンにある北朝鮮大使館
北朝鮮大使館は東ドイツ時代に建てられたものなので、当然ながら旧東ドイツ領地にある。周辺地図を見ての通り、東西ドイツ統一の象徴であるブランデンブルク門やベルリンの壁で分断されたポツダム広場まで1キロメートルほどで、ベルリン大聖堂は300メートルほどと近い。
北朝鮮大使館の西と南側、徒歩3分ほどの場所にベルリンの壁が建っていた跡が走っており、同大使館は旧東ベルリンの西端に位置していることが分かる。現在も分断されたままになっている同大使館を見ながら、かつての東西ベルリンを隔てていたベルリンの壁跡を探索してみるのも感慨深いものがある。
北朝鮮領事館内から「北朝鮮なう」。他にもある?
各国大使館や領事館はその国の法律の一部がおよばない特殊な場所として知られる。いわば治外法権的な特権で保護されている。そのため、2017年の金正男氏殺害事件でも容疑者が北朝鮮大使館に逃げ込み匿われていることが分かってもマレーシア警察は踏み込めなかった。
営業を停止したシティホステルベルリンは、北朝鮮領事館内にあるため解釈によっては北朝鮮にあるとも言える。そのため建物内から「北朝鮮なう」とツイートしてもあながち間違いとは言えない。
この記事を見て北朝鮮なうがしたかったという人もいるかもしれない。諦めるのは早い。現状、どうなっている未確認だが、ドイツメディアによると、ポーランドとブルガリアの北朝鮮大使館も同様に大使館の建物をホテルとして貸し出しているとのこと。興味がある人はぜひ探してみてほしい。