2020年初視察した肝いりの肥料工場が竣工

2020年初視察した肝いりの肥料工場が竣工

テープカットする金正恩委員長。後ろにははさみ置きを持って控える金与正氏(提供「コリアメディア」)

 米「CNN」や韓国「デイリーNK」などで、ほぼ同時に報じられた金正恩委員長の重体説。日本の一部ジャーナリストには脳死や死亡説まで言及するなど金正恩委員長の動向に注目が集まっていた。

 5月1日、金正恩委員長は、北朝鮮では大々的に祝われるメーデーの日に平壌の北に位置する順川の肥料工場の竣工式へ参加し、テープカットを行ったと2日北朝鮮『労働新聞』が報じ、同日午後3時からの「朝鮮中央テレビ」では動画で伝えた。

 この工場は、金正恩委員長が2020年の初視察として1月7日に報じられた肝いりの工場だった。 朝鮮中央テレビではドローンを使った空中撮影も駆使して工場施設の全体規模などをアピールしている。

当初情報統制気味だった中国もネットニュースでは報じられていた

 1日の金正恩委員長の動向は沈黙気味だった中国メディアでも大きく報じられており、官製の『環球時報』電子版ではトップ画面で金正恩委員長のテープカット写真を大きく紹介している。

 CNNが4月21日に金正恩委員長が手術を受けて重体になっていると報じてから中国では情報規制を敷いたのか、官製メディアでは報じることなく、中国外務省の耿爽報道官が質問に答える形で少し触れた程度だった。

 先週ぐらいには、中国の地方紙などで北京から平壌へ新型コロナウイルス対策への協力で医師団50人が派遣されたなどが報じられていた。「微博(ウェイボー)」などでニュース配信している「iWeekly」では、「4月25日にCNNが金正恩氏が重体であると報じたニュースが全世界を駆け巡っており、米『NBC』は、脳死と報じるもすぐに削除するなど情報が錯綜している」など詳細に伝える記事を見かけることもできたので、完全な情報統制を敷いていたわけではなさそうだった。

 もし中国政府が本気で情報統制を敷くと、官製報道はもちろん、地方紙やネットニュースでも一切キーワード単位で報道できなくなる徹底したなものだからだ。

タイではゴシップネタ扱いされるなど温度差あり

 1日の肥料工場での竣工式参加を比較的詳しく伝えている人民日報は、平壌支局の記者名で、労働新聞の記事と写真を引用する形で伝えている。また、一部ネットニュースでは、金正恩委員長の動静が伝えられるのは、4月11日の朝鮮労働党中央委員会政治局会議への参加以来となるとの解説が加えられているが、官製メディアでは、肥料工場でのテープカットの件のみで体調不良説や20日ぶりの動静だったなどの説明はない。

 まさに全世界が注目とまではいえず、話題となったのは日本と韓国くらいで、タイなどは妹の与正氏がゴシップネタ的に報じられるなど、各国での温度差は激しいが、日本では、今後もしばらくは金正恩委員長の動向が注目されそうだ。

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