韓国総選挙で元駐英北朝鮮大使館公使の太永浩が当選
韓国総選挙で元駐英北朝鮮大使館公使の太永浩が当選
4年に一度の韓国総選挙(定数300)が4月15日に投開票され、与党「共に民主党」が過半数を超える180議席を獲得して圧倒的勝利を収めた。
保守系最大野党「未来統合党」(セヌリ党及び自由韓国党の後継政党)は惨敗の結果に終わった。
だが、その未来統合党公認でソウル市江南甲区から出馬した太永浩(テ・ヨンホ)氏(候補登録名は「太救民」)である。彼は元駐英北朝鮮大使館公使であり、2016年8月に韓国に亡命した脱北者だ。
脱北者が国会議員になった例としては、趙明哲(チョ・ミョンチョル)元金日成総合大学助教授が2012年にセヌリ党から比例代表で当選した例があるが、選挙区から出馬して当選したのは今回が初めてである。
脱北者である太永浩氏が当選したことで南北関係に波紋が広がりそうだ。
北朝鮮は太永浩を人間のくずと強く非難
北朝鮮は、今年2月に未来統合党が総選挙に向けて太永浩氏を迎え入れた際に非難声明を出している。
対外宣伝メ候補者の中で、今後、南北関係に影響を与えそうな人物が当選している。ディア『メアリ』は、未来統合党が脱北者の池成浩(チ・ソンホ)氏に続いて太永浩氏も入党させたことに対し、「人間のくずを北南対決の突撃隊にすることは民族の統一志向に対する耐えがたい挑戦」と激しく批判。
さらに太永浩氏個人については、「共和国で国家資金横領罪、未成年強姦罪などの汚い罪を犯し、法の峻厳な審判を避けて逃げた天下の俗物、とうてい人間の部類に入れることができないくず」と強烈に罵倒している。
北朝鮮からすれば太永浩氏は祖国を裏切って逃げだした脱北者である。その上、太永浩氏は亡命後、金正恩体制を非難する活動を続けており、北朝鮮にとってそのような人物が候補者となるのは耐えられない屈辱だったと言える。
未来統合党も当然そのことを理解した上で出馬させている。北朝鮮との関係改善を図る文在寅政権にとってある意味ではこれ以上ない対抗馬である。
太永浩氏が出馬した江南区はソウル屈指の富裕層街。1992年以来、一度も進歩(革新)系の候補が当選したことがないという保守性向が強い地域である。その選挙区から太永浩氏を出したことを考えると、未来統合党は彼を何としても議会に送り込みたかったのかもしれない。
太永浩「持続可能な対北朝鮮政策を展開できるようすべての力を尽くす」
太永浩氏は文在寅政権の対北朝鮮政策について、以前から「今の対北朝鮮政策はとても屈従的」だと批判し、「(自身が)国会に入れば統一という大きな流れを作る統一哲学を立てるための立法活動に乗り出す」と発言していた。
太永浩氏は当選確定後、『聯合ニュース』のインタビューに対し、「(脱北者である自身が当選したことは)南北の住民が和解と和合、統一に向かう第一歩だと考えている」と語った。
また、今後の政治活動の抱負として、「政府が北朝鮮の現実を直視し、持続可能な対北朝鮮政策を展開できるようすべての力を尽くす」と述べている。
今回の選挙の大勝で文在寅政権は確実な政治基盤を持つことになり、太永浩氏の当選による南北政策への影響は当面限定的だとみられる。だが、南北両政府が彼の動向を注視することは間違いない。
八島 有佑