健康を証明するスマホアプリで感染拡大を管理する中国
健康を証明するスマホアプリで感染拡大を管理する中国
日本で新型コロナウイルスの感染がいつ山を越えるのか、見通しは立たない。海外では政府が中心になり携帯電話用のアプリを開発、感染防止に役立てている。
個人情報が含まれたデータを使っているため、日本では慎重な意見が多いものの、感染の拡大によっては、携帯アプリの必要性が論議されることになりそうだ。
まずは中国。個人情報を利用するのは当たり前の国だけに、現在すべての国民に健康を証明する携帯アプリを使うよう通知している。
写真(1)は中国東北地方に住む筆者の友人のものだ。自宅の住所と最近の立ち寄り先、治療歴が記録されている。新型コロナウイルスへの感染がないと証明する。
発熱があれば赤。咳、体調不良があれば黄色。無症状なら緑色で表示され、一目で識別できる。これで無症状だと証明されれば飲食店に入ったり、公共交通機関を利用できる。中国では感染の有無よりも、症状が重視されていることが分かる。
携帯を持っていないお年寄りや子どもの場合は、家族のアプリに名前を加え、画面を印刷して携帯すればよい。ただ、市民からはこのアプリについて「プライバシーがみんな分かってしまう」と不満の声が出ている。
感染者の立ち寄り場所が100m以内にあると反応する韓国のコロナ100m
感染者の立ち寄り場所が100m以内にあると反応する韓国のコロナ100m
韓国でも、携帯の位置情報を活用して、感染が起きた場所の位置情報がリアルタイムで分かるアプリがいくつも開発されている。日本ではダウンロードできないが「コロナ100m」というアプリは、感染者が過去に立ち寄った場所から100メートル以内に近づくとアラームが鳴るという。
写真(2)は市町単位で感染が起きた場所を示すアプリだ。
この他、軽症で自宅で自己隔離をしている人を対象にしたアプリも開発された。感染者を担当する公務員のID番号がないと使えないが、GPS情報を使って隔離者が勝手に外出しないよう見守る機能がある。
韓国では自宅隔離中に、外出して2次感染を起こすケースが相次いたため、考案された。携帯を自宅に置きっぱなしにすればいいと考えるだろうが、そうはいかない。
隔離中の人はリストバンドを付ける必要があり、携帯とリストバンドの距離が離れるとアラームが鳴る仕組み。現状では本人が同意した場合にのみ利用されている。
日本でも話題の台湾のマスク管理アプリ。アプリ乱立のよる混乱と役割分担が課題
日本でも話題の台湾のマスク管理アプリ。アプリ乱立のよる混乱と役割分担が課題
台湾は、マスク対策が巧みで世界的に高い評価を受けている。マスクの在庫管理アプリをダウンロードしてみると、特に制限なく店ごとの在庫を確認できる。写真(3)
これが実現しているのは、台湾政府がマスクの生産から流通まで一括管理、チェックしているからだ。民間任せの日本では、実現しそうにない。
その他の国では、簡単な問診を経て医師に電話相談ができるアプリも登場している。ただし、地域制限がかかっており、日本からはダウンロードできず、どんなソフトなのか確認できなかった。
今後はこういったアプリが乱立し、利用者の混乱が起きる可能性もある。相互の連携や役割分担なども課題になりそうだ。
五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)など。