東京五輪延期決定2日後にIOCに特例措置を要求

東京五輪延期決定2日後にIOCに特例措置を要求

今年1月にタイで開催されたAFC U-23選手権で優勝して東京オリンピック出場を決めた23歳以下の韓国代表 出典「FIFA.com

東京五輪延期決定2日後にIOCに特例措置を要求

 東京オリンピックの1年延期が決まり、各国のスポーツ団体や選手は強化計画の変更を強いられている。こうしたなか、4月3日、「韓国サッカー協会(KFA)」を安堵させるニュースが報じられた。

 「サッカー男子競技『24歳以下』出場可能へ、IOCが各国へ方針を通達」。

 新型コロナウイルスの影響でオリンピックの延期が決まったのは3月24日。KFAはその2日後の26日に「男子サッカー競技の出場資格に関する意見書」を「国際サッカー連盟(FIFA)」や「国際オリンピック委員会(IOC)」に送っていた。主な内容は、年齢制限の特例措置を求めたものだ。KFAは「オリンピック出場のために準備してきた選手が本大会に参加できないのは不公平だ」と強調した。

サッカー男子競技に生じた年齢問題

 オリンピックのサッカー男子競技の出場資格には「原則23歳以下(年齢無制限は3人まで可)」の年齢制限がある。本来、東京大会への出場資格は「1997年1月1日以降に生まれた選手」だが、開催が1年後となれば「1998年1月1日以降に生まれた選手」になる。1997年生まれの選手が本大会に出場できなくなれば「あまりにもかわいそうだ」というのが各国共通の思いだった。

 こうした事態を受けて協議を行ったFIFAが従来通りの「1997年1月1日以降生まれ」を維持する方針をまとめた。答申を受けたIOCが各国のオリンピック委員会に通達し、各国のサッカー協会や選手、とりわけ「1997年生まれの選手」が安堵したというわけだ。しかし、この問題に対し韓国が「不公平」を強調したワケはそれ以外にもあった。延期決定後にKFAがいち早くアクションを起こしたのもその表れだろう。そこには韓国の徴兵制がもたらすスポーツ選手への影響が関係している。

兵役義務と選手の苦悩

 韓国では、健康な成人男性(満19歳で成人)に約2年間の兵役義務が課される。兵役を終えて初めて「一人前の男」と認められる社会的風土も根強く、就職活動前の大学2、3年時に休学して軍隊に入る学生が多いという。進学や芸能活動を理由に延期も認められるが30歳までには入隊しなければならない。法律で定められている。

 韓国国民である以上サッカー選手も同じだ。しかし、野球などの他のスポーツよりも選手寿命が比較的短いサッカー選手にとって、19歳から30歳までのうちの2年間という時間はあまりにも長く、惜しい。ましてや低年齢化が進む欧州サッカーの舞台を目標に据える選手にとっては、20代前半の伸び盛りの時期に軍隊で足踏みをしているわけにはいかないからだ

 考えてみてほしい。昨年スペインの名門「レアルマドリード」と契約し、日本サッカー界を牽引する久保建英が(今年6月で19歳)、今後、何かしらの国の義務によって2年間の帰国を強いられたとしたら日本のサッカーファンはどう思うだろうか。こうした問題が韓国では現実的に存在する。
 

兵役義務がもたらす韓国サッカー発展への影響

 こうした事情を考慮してか、韓国のプロサッカーリーグ(Kリーグ)には有望な選手が入隊した場合の受け皿とされる「尚州尚武(サンム・サンジュ)FC」という国軍体育隊チームが存在する。しかし、実際に所属できるのは韓国代表歴や海外プレー経験などのある一握りのトップ選手だけだ。入団がかなわなければ一般部隊でのプレーを余儀なくされ、技術の維持は難しいだろう。

 一方、軍隊生活で養われる「勝ちにこだわるメンタリティ」が韓国サッカーの歴史を支えてきたという事実もある。かつて筆者が海外留学中に知り合った韓国人の多くは、「サッカーの試合で負けると、先輩から殴る、蹴るの指導があった。だから“死ぬ気”で走ったよ」と笑いながら軍隊生活をなつかしんだ。

 だがアジア全体のサッカーレベルの底上げが進む今、「精神論」だけで試合に勝てる時代ではなくなってしまった。兵役がもたらすメリットを差し引いたとしても、この問題が韓国サッカーの発展を遅らせる1つの要因であることは否定できないだろう。

 では、サッカーを含めた韓国の男子スポーツ選手が兵役に悩まされずに競技に打ち込むことは不可能なのか? いや、不可能ではない。「兵役免除」という「抜け道」があるからだ。

(続く)


Korea Republic v Germany – 2018 FIFA World Cup Russia™ – Match 43

 2018FIFAワールドカップ韓国VSドイツ(2018年6月23日)のダイジェスト動画。試合は韓国が2対0でドイツを破った。

北 幸多(フリーライター)

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