与党の党首がまさかの非科学的な発言
与党の党首がまさかの非科学的な発言
2015年に韓国でエンデミック(地域流行)した中東呼吸器症候群(MERS)は、2015年12月23日に終息宣言を出すまで韓国で38人の死者、感染者185人を出している。実はMERSは流行が沈静化しただけで、「厚生労働省検疫所」によると、2019年9月時点で死者851人、感染者2468人になっている。いまだワクチンが存在しないためだ。
韓国でエンデミックした当時、韓国出張はキャンセルされ、多くの日本人がトランジット利用する仁川国際空港の利用も控えられ、成田国際空港や香港国際空港などを経由して渡航していた。
今回の新型コロナウイルス騒動で、日本でも不安心理からネット上のデマが信じられて冷静さを欠いた集団行動が起こっているが、MERSのときの韓国では現職の国会議員の発言から多くの韓国人が信じ込んだフェイク情報があった。
「キムチがMERSに効く。キムチを食べるとMERSに感染しない。キムチでMERSに勝つ」といったものだ。
もちろん、科学的知見に基づいたものではなく、まったく根拠もない。驚くべきことに発言したのは当時の与党セヌリ党の金武星党首だったことだ。たちまちキムチを含めた発酵食品がMERSのコロナウイルスに有効だと信じられて買いだめ騒動が起こった。
輸出の13倍輸入している中国製キムチであふれる韓国
今回の新型コロナウイルスではこの話が韓国で話題となることはないが、関連は不明ではあるものの北朝鮮で新型コロナウイルス感染拡大後、発酵食品の消費が増えているのではという見方(コロナ騒動の中、北朝鮮から「ヨーグルト飲料」が日本に漂着する謎)がある。
MERS騒動ときに韓国を駆け巡ったデマが5年を経過して北朝鮮で信じられている可能性も考えられる。そうだとすると興味深い。
2017年、韓国は、輸出されたキムチ2万4311トンの13倍の規模の27万5631トンを輸入しており、輸入先の99パーセントが中国となっている(2018年1月17日『聯合ニュース』)。
新型コロナウイルス蔓延国である中国製のキムチが街にあふれていることも、今回、「キムチで勝つ」があまり出てこなかったことへ多少影響したのかもしれない。
世界のキムチは薬ではない
感染病を予防するためには、小まめな手洗いやうがいに加えて、基礎体温を上げて、抵抗力を高めることが重要となる。そのためには栄養があるものを食べて、しっかりと休息を取ることが基本となるのは言うまでもない。栄養という意味では、キムチも多少なりとも貢献するだろうが、「世界のキムチ」は、あらゆる面で優れた万能薬のように持ち上げて世界へ発信しているのは南北共通の傾向と言え、韓国では科学を飛び越え感情を優先させた行動がしばしば起こる。
日本も隣国を笑っているのではなく、反面教師として我が身に置き換えたいところだ。