ラオスは謎の中国車が走っている

ラオスは謎の中国車が走っている

人気の出てきたMGで、コンパクトカータイプかSUVタイプに人気が集まる

 東南アジアを歩いていると、日本では見かけない車種やメーカーの車が走っている風景を目にする。特にラオスでは日本ではほぼ走っていない中国の自動車メーカーが走っていたり、ベトナムでは韓国車が多い。

 東南アジアでもっとも日本人に人気が高いタイも同様だ。ただ、市場における人気は日本車がもっとも高いためにシェア率も高く、ベトナムやラオスほど珍しい車は走っていない。韓国の「ヒュンダイ」も日本では2009年に乗用車市場から撤退しているため、ほぼ見ないがタイではよく見かけ、「トヨタ」のアルファードに外観が似たバンタイプは、実際にトヨタ車よりも安価なためかタイ人から人気がある。とはいえ、それ以外のヒュンダイはあまり見かけない。

 今現在、タイで人気急上昇中なのが、英国の自動車メーカー「MG」だ。モーリスガレージ(MG)は1924年に英国で誕生した由緒あるメーカーであるが、日本では正規代理店がないため、ほぼ見かけない車だ。現在は、中国の「上海汽車」という企業の傘下にあり、2014年にタイの合弁会社の工場で生産を開始。タイ市場を中心に売り込み攻勢をかけている。

中国企業傘下でリバイバルしたMGがシェアが拡大中

中国企業傘下でリバイバルしたMGがシェアが拡大中

MG人気は高まっているものの、中古車市場ではやはり日本車が圧倒的に強い

 元英国メーカーでありながらタイ産の中国車でもあるMGは、SUVやコンパクトカーのような外観で、タイ人からの人気が高まっている。スマートフォンとのコネクタビリティーを活用しているので、モバイルと車のシステムの連動によって生活と車の距離感が密接になっている。

 しかも、価格帯もかなり安い。たとえばMGのZSというモデルはハイグレードでもおよそ79万バーツ(約276.5万円)となる。外観から見ると対抗車は「マツダ」のCX-3になるだろう。この車種はタイではおよそ119万バーツ(約416.5万円)だ。タイは輸入関税など車にかかる税金が高く、タイ生産車両でも日本の1.5から2倍近くになる。実際にCX-3は日本では300万円くらいが相場のようなので、タイはかなり高い。

 そのため、マツダには手が出ない人もMGなら買えるようになっているのだ。この価格的な戦略も効果てきめんだったのか、MGのシェア率がかなり上がっている。タイもトヨタが圧倒的に強く、次にピックアップトラックの需要から「いすゞ」がシェア2位につく。3位は「ホンダ」だ。

 しかし、2019年度の売り上げ台数は前年比でトヨタが5.5パーセント増、シェア4位の「三菱」が4.4パーセント増を記録しているものの、他のメーカーは軒並みマイナス増である。ところが、MGだけは前年比11.7パーセント増を叩きだしており、その人気の具合を証明している。

バブルを思い出す独MCMは韓国企業によりリバイバル

バブルを思い出す独MCMは韓国企業によりリバイバル

最近増えつつあるヒュンダイだが、これ以外の車種はほぼ見かけない

 タイ人は基本性能や安全性などにはあまり興味はなく、絶対値的に安いものを求める傾向にある。そう考えると、2020年も日本メーカーは苦戦し、MGのシェア率が伸びていく可能性がある。

 英国で誕生したMGは経営破綻して中国企業に買収されて中国企業として復活。創業時、MGはモーリス・ガレージの略称だったが、現在は、公式見解でエム・ジーの略とされている。ブランドイメージだけ遺産としてちゃっかりと利用しつつ創業の香りを消したいという中国企業の意向も垣間見える。

 自動車ではないが、同じようにヨーロッパの老舗企業が、アジアの企業の傘下となりリバイバルしたケースがある。レディースリュックや財布で知られるブランド「MCM」だ。日本ではバブル期に大流行したドイツのミュンヘン生まれのブランドだったが、現在は韓国企業となり、中国やタイへ売り込みシェアを獲得している。
 
 MCMは創業者の名前からマイケル・クローマー・ミュンヘンの略としてきたが、現在も同じブランド名でありながら、2005年に買収された後は、創業者名を外して、モード・クリエーション・ミュンヘンの略が公式見解となっている。本社は変わらずミュンヘンに置かれている。

 今後もMGやMCMのようにヨーロッパのブランド企業が中国や韓国などに買収されてリバイバルするようなケースが増えていくるのかもしれない。

高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』、近著『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレスなど。
@NatureNENEAM

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