文在寅大統領も絶賛した玉流館の平壌冷麺がソウルでも
2018年4月27日の南北首脳会談で金正恩委員長が用意した平壌冷麺が話題となって以降、韓国でも平壌冷麺が注目を集めている。
韓国を旅行した多くの人がソウルなどで冷麺を食べると一様に残念な味だと言われてしまうことが多い韓国の冷麺だがソウルにも北朝鮮に負けない冷麺を食べることができる店がある。
北朝鮮料理を提供する「トンムパプサン」の平壌冷麺がソウル市民にも好評を博していると雜誌『Pen』2020年2月15日号、「平壌、ソウル」でも取り上げられている。
ソウルに北朝鮮料理店っと驚くかもしれない。だが、それもそのはずで、店主のユン・ジョンチョル氏は、南北首脳会談で提供された「玉流館」で修行経験がある脱北者だからだ。ユン氏は2000年に鴨緑江を渡り中国経由で韓国へ脱北したそうだ。まさに玉流館のレシピで作られる冷麺を提供している。
味の差は水が違うから?
トンムパプサンへ北朝鮮を中心に中国やアジア中の北朝鮮レストランの冷麺を食べ歩いてきた旅女の孫蘭貞さんが訪れた。
看板メニューである平壌冷麺を食べた感想は、「麺は日本そば近く、スープは美味しいけど平壌の冷麺とは違う。東京浅草橋の『サンムーン』の冷麺の味に近い印象を受けた」 とのこと。
サンムーンの平壌冷麺は、平壌の「高麗ホテル」のレストラン勤務経験があるシェフが作るため“高麗ホテル直伝の味”の異名を持つ冷麺として冷麺好きには知られている。同店は焼肉店なので〆(しめ)の一杯として食べられることが多い。
孫蘭貞さんが訪れた日には、店主のユン・ジョンチョル氏がいたので話を聞かせてもらったところ、ユン氏は、脱北を仲介するコーディネーターへ賄賂を渡さずに脱北を決行したため国境警備兵から銃で打たれながら命からがら鴨緑江を渡ったとのこと。
孫蘭貞さんはついでに、「玉流館へ何回も訪れて食べているが味が違うのはなぜ?」と直球で質問をぶつけてみると、ソウルは漢江、平壌は大同江で水が違うからと答えたそうだ。
「う~ん、そうかな?軟水と硬水くらい違うと影響はあると思うけど…」っと、ややモヤモヤとした感情を引きずりつつ孫蘭貞さんは店を後にした。
冷麺はスープが命。2時間半かけてじっくりと作る
冷麺はスープが命。2時間半かけてじっくりと作る
トンムパプサンの平壌冷麺は、1万1000ウォン(約1000円)。他にもスンデ1万2000ウォン(約1100円)などありいずれも韓国とは違う北朝鮮の味が楽しめる。
Penの説明によると、北朝鮮の平壌冷麺のスープには、牛肉、豚肉の他、キジ肉を基本材料として用いるためスープを飲むとキジ肉の特有の香りを感じることができる。トンムパプサンのスープは、牛肉、鶏肉に玉ねぎ、ネギだけを加えて2時間半ほどかけて煮込んで完成させる。透明感があり、薄味でさっぱりとしながらも牛肉の旨味がしっかりと感じられるのが特徴だ。
トンムパプサンは、地下鉄2号線合井(ハプチョン)駅の7番出口を出て漢江へ向かって徒歩2分くらいの駅近な好ロケーションなので分かりやすい。
大きな川の近くに店があるのもどこか本家の玉流館を彷彿とさせる。
協力 孫蘭貞さん