平壌マラソン大会2020参加ツアー実施は未定
中国の北朝鮮旅行の代理店によると、22日午前、「朝鮮国際旅行社」社長名義で、22日から外国人観光客の入国を全面停止する旨が通達された。
入国停止理由は、中国武漢市で発生し22日の時点で死者9人と中国国家衛生健康委員会が発表している新型コロナウィルスによる肺炎感染対策を挙げている。
北朝鮮では、過去にも感染予防を理由に外国人観光客の入国を全面停止させたことがある。近々だと、2014年12月のエボラ出血熱感染予防を理由にした入国停止がある。このときも突然、各代理店へ通達され猶予期間もなく即日入国を停止し、翌15年3月に解禁し観光入国を再開するも4月12日の平壌マラソンは、参加ランナーたちの準備が間に合わず参加者を大きく減らしことがあった。
中国の手配代理店によると、今回の入国停止により今年のマラソン大会への参加ツアーは実施未定となったと説明している。
新型肺炎患者は全員中国人。それでも全外国人を入国停止対象に
今回の新型肺炎が発生しているのは中国であり、日本や韓国、タイ、台湾、アメリカなどでも患者が確認されているが主要メディアが「帰国」の表現を用いたり、国籍を明記しないなどのミスリードもあり、いずれの患者も中国人であることが伝わっていないことは問題だろう。
そうすると、北朝鮮が新型コロナウィルスによる肺炎感染対策を講じるとしたら、中国人のみを入国禁止にすればいいとなる。実際、22日、朝一の情報では、「中国人観光客の訪朝を全面停止」と報じた韓国メディアもあった。
元々、冬季期間に北朝鮮を訪れる観光客は少ないこともあり、夏のハイシーズンのように中国以外からのチャーター便も運行されていない。そのため、北朝鮮への入国ルートは、ロシアのウラジオストクの週2便の空路定期便を除けば、ほぼすべて中国経由となる。そうなると、中国人以外の外国人であってもほぼ全員が中国経由での入国となるため全外国人を入国停止対象にせざるを得なかったのだろう。
早い決断実施の背景には隣接する遼寧省大連での患者確認
22日朝に通達、実施としたのは、前日21日、中朝国境を接する遼寧省の大連で初の新型肺炎患者が確認されたことが影響したと思われる。さらに大連では22日午後に2例目が確認されている。
同じ遼寧省には、毎日国際列車が発着する丹東や週2便で空路定期便が飛ぶ瀋陽がある。ましてや25日の旧正月(春節)前に省内、中国国内移動で30億人の中国人が民族大移動する大型連休のタイミングもあり新型肺炎がさらに拡散し、北朝鮮へも及ぶ懸念が高まったと判断したため、即停止実施へ踏み切ったと推測される。
今の北朝鮮にとっては、観光業は外貨獲得の残された数少ない重要な手段となっている。しかし、それを捨ててまで外国人韓国客の全面停止へ踏み切った。いくら、外国人観光客自体が少なく、徹底して管理している北朝鮮とはいえ、決断と実施は思いのほか早い。
中国人が1年でもっとも楽しみにしている春節直前に関連する中国の旅行会社が悲鳴を上げる中、北朝鮮による外国人観光客の全面入国停止開始となった。