ビンスー登場は2017年前後からで今では完全定着
タイでは若者や子どもたちの間で「ビンスー」が人気だ。2017年前後から巷でよく見かけるようになり、今ではタイの老若男女問わず、誰もが知るスイーツとして定着している。
ビンスーとは氷菓のことである。日本人にはかき氷のイメージに近いもので、日本のものよりも氷はもっと細かく削ってあり、舌の上でさらりと溶ける。基本的に1年中暑いタイでは、その口の中ですっと溶けていく食感の心地よさが特に気に入られたようだ。
ビンスーの原型は韓国の氷菓である「パッピンス」のようである。韓国の小豆の氷菓がパッピンスで、氷を意味する「ピンス」がタイ語訛りになってビンスーと呼ばれる。本場韓国では1900年代初頭に登場したとされ、伝統とまでは言わないでも、昔からある氷菓のひとつだ。これが近年になって様々なトッピングが加えられて、新しい韓国スイーツとして定着しているという。
バンコクのレストランや屋台でもビンスー
韓国発のスイーツは日本だけでなくタイでも注目されており、この近年の発展系パッピンスがタイに輸入された。本場同様にココアの粉がかけられたり、アイスクリームが載せられたりと、日本のかき氷とはイメージがまったく違うものになっている。
タイのビンスーは、洒落たカフェなどで食べられるほか、最近では屋台にも見られ、人気店は列ができるほど。アイスクリームの大手チェーン店、レストランチェーンでも定番メニューになっている。韓国焼肉のチェーン店では食べ放題メニューの中にもビンスーがあり、タイでもっとも手軽に食べられる氷菓と言っても過言ではない地位を確立しつつある。
4、5月の夏本番のタイで韓国パッピンスを凌駕するビンスーに注目
アイスなどの乳製品だと、氷が溶けた水と混じり合ってしまい、筆者には抵抗感がややあるが、元々タイのスイーツはココナッツミルクに氷を入れた伝統的な甘味もあるので、多くのタイ人はあまり気にしていないようである。韓国ではビビンバのようにまずは全部かき混ぜてしまってから食すことが一般的のようだが、タイではかき混ぜずに上からすくって食べている人が多いように見受けられる。また、一食の量が他国と比較して少なめのタイ人は、ひとつのビンスーをテーブルの中央に置き、友人や家族など複数の人で会話を楽しみながら食べる様子も見られる。
タイは、例年4月5月が年間でもっとも暑い季節とされる。1月に入った現在、夏本番に向けて気温が日々、上昇している。今年もこれからがタイにおけるビンスー需要が高まる時期に入る。この季節はタイも様々な果物がハイシーズンを迎えるので、韓国では味わえない、タイ独自のビンスーも登場するかもしれない。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』、近著『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレス
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