ベトナムと韓国は同じ左ハンドル仕様
東南アジアでは家電のほか、自動車に関しても韓国メーカーが日本車よりも増えている。ベトナムやタイ、ラオスでは今でも日本の家電や車が人気ではあるが、価格帯が高めの設定になるため、それよりはやや安い韓国メーカーのものを選ぶためだ。憧れは日本、現実は韓国といったところか。
また、ベトナムは車が右側通行であるため、運転席が日本車とは反対側になる。日本車でも左ハンドル仕様の輸出車はあるが、韓国自体が右側通行であることから、特にデザイン変更することなく持ち込めるメリットがある。そういった点も価格設定に反映されている可能性はある。
カンボジアナンバーの長距離バスがホーチミンに。ヒュンダイ製バスだった
そんな中、近年は東南アジア各国間の結びつきが強くなっていて、昔から存在はするものの、国境を越えて陸路で隣国へと旅をするルートがより増えてきている。ベトナムからだと北部ではラオス方面、南部だとカンボジアへと陸路移動が可能だ。ラオスやカンボジアまで行けばタイへの越境陸路バスが存在するので、時間さえ許せば東南アジアのほとんどを陸路で移動することがより簡単になってきている。
ベトナム南部の最大都市ホーチミンからもカンボジアの首都プノンペンへと長距離バスで移動できる。かつてはタイの首都バンコクのカオサン通りというエリアがバックパッカーの聖地とも呼ばれたが、タイ国内全般の物価上昇で低予算旅行者が減っている。その代わり、カンボジアのシアヌークビルやこのホーチミンにバックパッカーが集まっている。
ホーチミンの安宿街はブイビエン通りで、今、全盛期のカオサン通り以上の盛況ぶりを見せている。この辺りにある旅行代理店がプノンペン行きバスのチケット販売をしており、ここからバス一本で隣国の首都へと旅立てる。ある旅行社の前に駐車していたプノンペン行きのバスを見ると、韓国の自動車メーカー「ヒュンダイ」のロゴ、車体にはカンボジア語、ナンバープレートもカンボジアのものだった。純粋なヒュンダイ車ではなくカンボジアで改造したものと考えられるが、この長距離バスは韓国車と言っても過言ではないだろう。
ヒュンダイのエンジンが搭載されるベトナム製のバスも増える
ベトナムではこのほか韓国のバスがあらゆる場所で見られる。ホーチミン市内は路線バスの交通網が発達しているが、そこで使用されるバスにはベトナムの自動車製造の「SAMCO(ベトナム交通運輸機械公社)」の車両もある。ベトナム製のバスではあるが、車種によっては「いすゞ」のほかヒュンダイのエンジンなどを搭載している。
このようにベトナムではバスというと韓国メーカーという印象が強くなりつつある。韓国人移住者も増えているようなので、今後、日本人のビジネステリトリーが脅かされるのかもしれない。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』、近著『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレス
@NatureNENEAM