北朝鮮で中国語とITスキルの訓練を受けた北朝鮮人女性を派遣

北朝鮮で中国語とITスキルの訓練を受けた北朝鮮人女性を派遣

丹東新区での中朝経済協力構想図。鴨緑江の中洲にゴルフ場が見えるがいずれも実現していない

丹東での日中朝3か国夢のプロジェクトはなぜ頓挫したのか?(1/2)の続き。

 派遣される北朝鮮人は、ほぼ全員が20代前半の女性で、語学は北朝鮮国内で中国語を習得しているとされ、つまり、社内での共通語は、中国語となる。さらには「ウィンドウズ」のOS操作、「ワード」や「エクセル」など「マイクロソフトオフィス」の基本知識も訓練を受けてから派遣されるという。

 丹東ソフトウェアパークは、無期限開通延期となっている新鴨緑江大橋がある現在の丹東新区に計画されて、北朝鮮人スタッフたちは、これまた中朝共同開発が止まったままになっている黄金坪から通勤してくるとされていた。

寮を提供しても人件費は地元中国人の半額

 北朝鮮人材を活用する日本企業(正確には現地法人として設立された会社のブランチとして)への条件として、北朝鮮人スタッフのため寮を提供すること(寮費も負担)。寮と会社を往復するためバスを用意すること。昼食を提供することが示された。

 それでも魅力だったのは人件費だった。1人あたり1000元(当時は元安で約1万25000円)、寮費やバス代、食費負担を入れても1人たり1500元(約1万8800円)を切っていた。当時、地元丹東の中国人材を採用すると1人月給で2000元(約2万5000円)、さらに福利厚生などを含めると3000元(約3万7500円)は超えたので半額以下だった。

張成沢粛清で幻のプロジェクトに

張成沢粛清で幻のプロジェクトに

丹東と大連や瀋陽を結ぶ高速鉄道(2015年開業)も中朝経済プロジェクト促進にと期待されていた

 実際に説明通りの訓練を積んだ北朝鮮人材だったのか…は、実は今では分からない。なぜなら、このプロジェクトは頓挫し、大幅縮小して日中朝による夢の3か国共同業務は、実現しなかったからだ。

 頓挫した明確な理由は不明だが、張成沢氏の失脚が関係しているとされる。金正恩委員長の義理の叔父であり後見人ともされていた張成沢氏が処刑されたのは2013年12月のことだ。

 張成沢氏失脚で、彼が進めていたとされた中朝共同開発が決まっていた黄金坪開発区も止まり、丹東市が新鴨緑江大橋を中心とした新たな都市計画の中心に据えるべく計画した丹東新区構想も大幅に失速することになる。

薄熙来失脚で丹東経済は奈落の底へ

 さらに悪いことは重なるもので、中朝関係が急速に冷え込み丹東経済はダメージを受け、中国政府内の権力闘争に破れ失脚し2013年に無期懲役が確定した薄熙来元大連市長、元遼寧省長の失脚によって関係があった会社や組織などが処罰されたりで中央からの締め付けが強化され経済活動へ大きなブレーキがかかり、現在にいたるまで遼寧省を中心に東北3省は景気低迷が続くことになる。

 歴史にもしは禁句だが、もし張成沢や薄熙来失脚が起こらなかったら現在とはまったく違った丹東の姿を見ていたかもしれない。

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