タイのローカルスーパーにもキムチが登場
東南アジア全域的にK-POPや韓国ドラマ・映画の進出が、日本のエンターテインメントコンテンツを超えて著しい。中でもタイは社会的な環境、タイ人の国民性から、韓国エンタメの浸透が強い。
韓国人起業家のタイ移住も少なくないので、韓国料理店も、特にバンコクは和食に追いつく勢いで増えている。タイ人も韓国のドラマ、映画、バラエティ番組で韓国料理を目にして興味を持ち、韓国料理や焼肉店が増えており、韓国のかき氷であるビンスーといった単語も定着している。
そういった韓国料理の浸透に比例して、一般的なスーパーマーケットでのキムチの取り扱いも増えているようだ。外国人在住者が多いエリアなどはかねてよりキムチの品揃えは見受けられたものだが、最近は外国人が少ない地域でもキムチは当たり前のように販売されている。
キムチはタイ人の口に合う料理だった
キムチは漬け物であるが、同時に発酵食品でもある。日本の発酵食品の代表というと納豆があるが、タイ人の中には納豆を苦手とする人が少なくない。しかし、実はタイ北部の発酵食品のひとつにトゥアナオというものがある。これは豆を発酵させた食品で、納豆にかなり近い。
他にも、タイには発酵食品が数多くある。豚肉を発酵させたソーセージ風の食べものであるネーム。白菜などの野菜の漬け物であるパックドーンなどもあるし、タイ料理には欠かせない魚醤であるナンプラーも、カタクチイワシを塩漬けにして発酵させた調味料である。このように、外国人観光客でも目にする食べものに発酵させたものが数多くあるほど、タイ人は元々発酵食品に慣れた味覚を持っている。
特に、タイの発酵食品には乳酸発酵の保存食が多くあるので、キムチも乳酸発酵をさせているものであること、それからタイ人が好きなトウガラシやニンニクなども含まれていることから、タイ人には馴染みやすいのだ。
和食定食の漬物代わりにキムチを出す店も
スーパーで売られているキムチは量産品で、韓国人経営の韓国料理店で食べる自家製キムチには遠く及ばないものの、さすがにキムチを自宅で作ることは、まだできないタイ人家庭においては、こういった既製品のキムチを買い求める。食べ方はそのまま食べることあれば、見よう見まねでチゲ鍋のようにスープにする世帯もある。
近年は、タイ人経営の和食店やタイ人をターゲットにした日本人経営の和食店で定食を出す場合、漬け物の代わりにキムチを出す店も多い。入手性が高まっていることと、タイ人がキムチを好むためである。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在に至るまでバンコクで過ごしている。
近書『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』
2019年9月25日発売の新書で『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレス
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