吉林省と接する羅先。日本人誘致に力を入れるも日本語ガイドは1人
人口約20万人の特別市として中国やロシアからの投資を受け入れている羅先は、隣接する中国吉林省と気候は、ほぼ同じため同地周辺のマツタケを中国産と産地偽装されて日本で売られていたなどのニュースで話題となった。専門機関が付着する土などを調べても羅先と吉林省だと区別がつかないため判別が困難なくらい地理的に近い。
その羅先で日本人旅行者を担当するのは、女性が代表を務める「羅先国際旅行社」という旅行会社となる。羅先は、中国人であれば、パスポートはもちろん、ビザも取得することなく中国の身分証のみで訪れることができる。そのため、羅先観光の開放は中国人向けから始まったこともあり、同社には、中国語ガイドは40人ほど在籍しているのに対して日本語ガイドは1人しかいない。
そんな羅先は、今年に入ってから日本人の観光誘致に力を入れている。
今回は、羅先の観光事情についてではなく、羅先が首都である平壌と違う特殊なエリアである一面をご紹介したい。
北朝鮮唯一海外から直接電話できる羅先
羅先を除く、平壌も含む他の北朝鮮地域へ中国など国外から国際電話をかけると、たとえば、平壌ならまず平壌市の電話交換手が対応する。交換手へ通話をしたい電話番号を改めて伝えると、交換手が電話を相手へつなげる。国際電話でかけられるのは、原則固定電話のみとなる。もし、相手先が不在のときは、それまでかかった電話代は無駄になることも多い。
それに対して、羅先は、固定電話、携帯電話問わず国外からでも直電でつながる。
日本でもかつて電話交換手が存在しており、映画やドラマなどで電話回線を手動で壁の穴へ差し替えている場面を見たこともある人もいるのではないだろうか。
羅先居住者はビザなしで中国吉林省へ行ける
羅先居住者はビザなしで中国吉林省へ行ける
また、羅先は羅津港などを中国やロシアへ長期借款しているとされていることもあり、中ロとの関係が強い。
中国との関係でいえば、羅先在住者は、ビザなしで中国へ入国滞在できる。ただし、中国の吉林省限定となる。これが遼寧省や黒竜江省へ行くとなるとビザが必要となるそうだが、今の中国では省を越えるときに身分証を確認する検問などは設置されていないのでどうやって取り締まるのか不明ではあるももの、羅先の北朝鮮人は、合法的にビザなしで延吉や長春などへ行くことができる。これは北朝鮮での特別な出身成分(階級、身分に相当)だけが住むことできるとされる首都平壌の人間にもない特権となる。
さて、そんな羅先は、半ば中国の統治を受ける都市なのか、それとも、平壌を凌駕する北朝鮮トップクラスの最先端都市なのであろうか。
動画は、中国のミニ動画投稿アプリより。8月下旬の日曜日、中朝国境の琿春出国検査場で順番待ちをする中国人旅行者を映したもの。
長蛇の列であることが分かるのと、並んでいる人たちの荷物を見るとスーツケースを持っている人は数えるほどで多くが荷物なしの軽装であることも分かる。撮影日が日曜日のため、ここに映る多くの中国人は日帰り滞在だと推測できる。