北朝鮮人の中国観光ビザ取得が増える
丹東の北朝鮮労働者は減少傾向だが北レスは復活しつつある?の続き。
同様の形態は、中朝合弁企業から中国独資企業への切り替えが間に合わず、最盛期4店あった北レスが全滅した日本人も多く生活する大連にも2店確認できる。中華風北レスとでも表現すればよいのであろうか。
丹東関係筋によれば、北朝鮮人労働者が取得するビザは、30日間の観光ビザ(L)らしく、1か月に1度出入国を繰り返しているという。
というのは、現在、北朝鮮人が就労ビザを取得することが難しく、もう少し長く3か月滞在できる出張ビザ(M)の取得も厳しくなっているという。そのため、1か月間有効の観光ビザを新たに取得してレストランで勤務をしていると見られ、北朝鮮人の観光ビザの取得件数が増えているとのことだ。
1か月間有効の観光ビザで就労か?
ここで疑問となるのは、観光ビザは当然ながら観光目的のビザのため就労してはいけない。では、どうなっているのだろうか。
習近平政権になった2014年11月に反スパイ防止法が施行され、15年に入ったころから大連の日本人が不法労働の嫌疑を次々とかけられて1、2万元(15万7000円~31万4000円)の罰金を支払い、さらには2、3週間勾留され、強制送還させられた日本人が多数出るなど就労ビザについて厳格化されたにもかかわらずだ。
ちなみに不法労働嫌疑をかけられた日本人の多くは観光ビザではなく、出張ビザで滞在していたはずが、ビザ申請時の業務内容と異なるなどの理由をつけられて処罰されているケースが多かった(日本国籍者は中国での15日間のビザなし滞在が認められているため観光ビザを取得する人は少ない)。
では、観光ビザで飲食店勤務をする北朝鮮人はどうなっているのだろうか。
「Lなので就業していないことになっているか、何かしらの手段を用いて地元政府(市役所相当)から目をつぶってもらっていると思われます」(丹東関係筋)
大連在住の中国朝鮮族の企業経営者が、5月に大連の中華風北レスへお客さんの宴会を開こうと予約の電話をしたら、「朝鮮人スタッフが全員ビザ調整で帰国しています」と告げられて、予約を止めたという話をしていた。
「大連や丹東ならまだすぐに朝鮮へ帰国できるからいいけど、北京や上海はどうするのでしょうかね?」(大連の朝鮮族経営者)
中朝国境が遠い北京の北レス従事者
中朝国境が遠い北京の北レス従事者
6月に首都北京の北レスを調査をした人の話によると今年6月時点で北京には北レスが6店の営業していることを確認したとのこと。北朝鮮人スタッフ勤務も確認している。中には平壌の「玉流館」の支店と言われていた店もあるが、現在は、いずれも中国独資の北レスもどきのはずだが、果たして実態は…。
北京は平壌をと結ぶ空路の定期便があるが、月に1度、空路で帰国させるとはコスト的に考えづらい。そうすると、推測だが、半日揺られて丹東へ到着する夜行列車(K27/K28・毎日運行)で丹東へ行き、対岸の新義州への出入国を繰り返しているのかもしれない。
休日がほぼないと言われる過酷な北レス勤務なので、休暇は丹東、新義州への移動日が毎月の休日扱いになっているのかもしれない。