かつて中国人から見向きもされなかった丹東
中国もメーデー連休に入り、冬の寒さが厳しい中国東北の丹東市も本格的な観光シーズンを迎えている。
丹東は、日本のニュースでは、中朝国境の街として知られているが、中国人には長らく不人気な負の歴史を持っている。その丹東は、中国の経済発展にともない旅を楽しむ中間層が増え、北朝鮮問題が中国でも頻繁に報じられるようになると関心を持つ中国人が丹東を観光として訪れるにようになった。
15年前は8月でも人がまばらだった断橋(中朝友誼橋)や万里の長城の最東部といわれる虎山長城は、ここ数年は多くの人で賑わい、特に夏場はホテルの予約がれない状況になっている。
朝鮮半島の緊張緩和で日本人観光客が丹東へ戻ってきた
拉致問題を抱え元々関心が高い日本人は北朝鮮見物に丹東を訪れていたが、2015年以降は、スパイ容疑などでの拘束者が出たことでトーンダウンし、訪れる日本人は減少していた。その状況が、昨年3月26日の北京での初の中朝首脳会談、4月27日の板門店での南北首脳会談などで朝鮮半島情勢の緊張が緩和したことで、観光面へポジティブな影響を与え、日本の地方自治体関係者の視察が増えたことは以前にお伝えしたが、日本人観光客も戻ってきている。
日本人向けの丹東観光の集客をするポータルサイトによると、2017年はガイド依頼(成約済み)0件、2018年は3件、2019年は4月29日時点で6件と、すでに昨年2倍になっているという。
ガイドを手配する丹東の旅行会社へ話を聞くと、多く日本人観光客は大連などを訪れたついでに日帰りで丹東を訪れて1日観光してその日のうちに大連へ戻る人が半分くらいという。それでも丹東観光をする日本人が戻ってきたことを嬉しく思うと話す。
丹東が安全になったわけではない
丹東が安全になったわけではない
では、丹東は安全になったのかといえば、そうとも言い切れない。日本人(神奈川県の元在日帰国者で脱北後に帰化した男性)がスパイ容疑で拘束され有罪判決を受け、昨年12月には、ファーウェイ問題の報復と見られるカナダ人のマイケル・スパバ氏が丹東で拘束されスパイ罪の嫌疑で現在もどんな状況なのか不明な状態が続いている。
丹東に限らず、中国全土でスパイ容疑で拘束される日本人は2017年ごろをピークに減少しているが、それは昨年が日中平和友好条約締結40周年だったことと米中貿易戦争によって対日政策を一時的に変更しているためと考えられる。
すでに40周年関連の一連の行事は終了し、5月1日以降に習近平主席が来日し新天皇と会談を終え、米中貿易戦争が終息したら再び…の可能性が高いと中国問題の専門家らは見ている。