対岸は真っ暗でインスタ映えしない

対岸は真っ暗でインスタ映えしない

鴨緑江では珍しいアーチ橋の月亮橋(2018年9月撮影)

北朝鮮にもっとも近いホテル その1 月亮島の続き。

 ゴーストタウンが丹東を代表するおしゃれスポットへ大変身した月亮島。対岸の北朝鮮まで約600メールほどの距離だが、月亮島を訪れた人の写真を見ても対岸を写している人は少ない。

 なぜなら、対岸は、北朝鮮の工場など平屋の建物がポツポツと並ぶ程度で人がけもほとんどない。しかも、日が落ちると真っ暗で何も見えない。当然、客室から夜間に北朝鮮側へカメラを向けても漆黒の闇だ。そのため、多くが中洲内のイルミネーションや丹東側と中洲との間の泥が堆積して埋まりつつあるの川、城みたいなホテルの建物などを写真に収めている人が多いのはそのためだろう。そう対岸はまったくインスタ映えしないのだ。

北朝鮮へ見せつけるため?

北朝鮮へ見せつけるため?

北朝鮮が望める月亮島の中心広場

 丹東にまだ高層ビルがなく観光客も少なかった2000年代初めに時期尚早ともいえる月亮島リゾート施設開発を始めたのなぜか。その理由について丹東生まれで飲食チェーン店を経営する劉さんが教えてくれた。

 「鴨緑江に何百とある島(中洲)で中国領土は数えるほどしかないのため実効支配をアピールするために北朝鮮側へ中国はこれだけのものが作れるんだということを見せつける必要があったと仲間内では言われていました。そんな中国のメンツを先行させた部分もあったので採算が合わずに鬼城(中国語のゴーストタウン)になったのは当然かもしれません。それでも巨大建築を北朝鮮へ見せつける役割は十分に果たせたんじゃないでしょうか?」(劉さん)

鴨緑江の中洲の9割は北朝鮮領

鴨緑江の中洲の9割は北朝鮮領

鴨緑江の中洲で干されている北朝鮮駐在員の洗濯物

 劉さんの指摘通り、鴨緑江の中洲は9割以上が北朝鮮領土となっている。これは、毛沢東・金日成会談で決められたものであり明文化はされていない。そのためか、北朝鮮領のどんなに小さな中洲でも昼間は北朝鮮人や家畜が「駐在」しており、中国に対して実効支配をアピールしているようで面白い光景だ。

 地図上だと中朝国境線は鴨緑江の中央を走っているが、実際は黄金坪のように中国側に接岸している北朝鮮領の中洲もあるので、鴨緑江の北朝鮮の中洲分9割くらいは北朝鮮領との見方もできる。

 さて、最初に紹介した月亮島の北朝鮮にもっとも近いホテルであるが、丹東から50キロメートルほど北東へ車を走らせると、これも中国領の中洲「河口村」という場所がある。ここは満州時代、朝鮮側へ1942年(昭和17)に架けられた鉄道が通らない道路橋では鴨緑江最長の橋で、当時は「清城大橋」と呼ばれた。橋の全長は、709.12メートルあったが、朝鮮戦争のときに米軍の空爆により破壊され、「断橋」となっていて、中朝友誼橋の隣の断橋と並びもう1つの断橋とも呼ばれている。

(続く)


鴨緑江の大小多くの中洲は北朝鮮領土となっている

  • 月亮島から見える北朝鮮風景

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