文在寅大統領の演説と対北方針

文在寅大統領の演説と対北方針

出典 『聯合ニュース

文在寅大統領の演説と対北方針

 韓国統一部は、8月13日、同日行われた閣僚級会談で、「9月に平壌で南北首脳会談を開催することで合意した」と発表した。実現すれば今年4月27日、5月26日の板門店会談に続いて3回目の南北首脳会談となる。

 発表後の8月15日の「光復節」に開催された韓国政府主催の式典において、文在寅大統領は演説の大半を南北関係の話題に費やし、9月平壌会談について、「板門店宣言の履行を確認し、朝鮮戦争の終戦宣言と平和協定に向けて大きな一歩を踏み出す」と強調するなど、南北和平への強い思いを改めて世に示した。

 一方で、経済協力というテーマについては、南北境界地域に「統一経済特区」を設置するなどのプランを紹介したものの、「完全な非核化と朝鮮半島の平和が実現すれば、本格的な南北経済協力を進めることができる」としており、あくまで南北経済協力は「非核化」が実現した後になると述べた。

 経済協力を進めたいとする南北に対して、米国は「非核化」が実現するまで北朝鮮への制裁を維持する方針を示しており、韓国にも経済協力で先走らないよう自制を求めている状況である。

 米朝両国の板挟みになっている文在寅大統領であるが、今回の演説では、米国の方針に沿うという意思を示す形になった。

米朝の板挟みになっている文在寅大統領。第3回南北首脳会談の重圧

 9月の平壌会談で文在寅大統領にのしかかる重圧は大きい。

 金正恩党委員長は会談にあたって、「南北経済協力に向けた作業を具体的に決めていきたい」と文在寅大統領に話を持ち掛ける可能性が高い。

 もし文在寅大統領が米国に従って具体的な協力プランの決定を拒めば、金正恩党委員長を大きく落胆させることになる。

 だが、もし現状で文在寅大統領が米国の意向を無視して経済協力関係を強化すれば、米韓関係の悪化は避けられず、韓国にとってデメリットが大きい。

 このような困難を理解した上で、9月に首脳会談を開催することを決意した文在寅大統領には、南北統一への熱い思いだけでなく、首脳会談成功に向け何らかの「勝算」があるのだろうか。

第3回南北首脳会談に向けた文在寅大統領のねらいと勝算とは?今後の南北協議に注目

 現状での文在寅大統領にとって理想的な流れは、9月の平壌会談までに北朝鮮が米国の求めに応じて非核化作業に着手し、米国が南北の経済協力に理解を示すことである。

 だが、文在寅大統領が、「あと1か月で北朝鮮と米国双方を説得できる」という無謀な考えで南北首脳会談の開催を決定したとは考えにくい。

 文在寅大統領には、「金正恩党委員長がいささか韓国の態度に落胆したとしても、南北対話及び米朝対話をやめることはありえない」という認識のもと、9月会談が、朝鮮半島の非核化に向けた南北双方の意思確認や、「板門店宣言」履行に向けたスケジュール調整で終わったとしても問題ないという余裕があるのかもしれない。

 これまでの文在寅大統領の対北政策から、「米朝対話が進まない限り南北経済協力も大きく動き出せないのだから、その間に南北が再び疎遠になるよりはこのタイミングで顔を合わせて南北首脳の関係を強化すべきである」と考えている可能性もある。
 
 南北首脳会談が合意されたことで、今後会談準備のための南北協議が進められ、政府高官など文在寅大統領の特使が訪朝する可能性が高い。

 文在寅大統領にとって特使の派遣は、金正恩党委員長の非核化などに対する意向を確認し、米朝関係進展のために韓国がなすべきことを明確にできる重要な機会となる。

 “米朝対話の膠着(こうちゃく)状態を打破できる切り札があるのか?”“それとも南北関係の強化に注力するのか?”

 文在寅大統領の9月会談成功の「勝算」が何であるかは早ければ8月中に明らかになるかもしれない。

八島有佑
 

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