金正恩氏はマック使い?エゴサーチを欠かさない
北朝鮮でもインターネットを一部の人は使える。金正恩朝鮮労働党委員長とその周辺の最高幹部たち、さらに公式メディアである『労働新聞』、『朝鮮中央通信』の記者、そして一部の外交官、統一戦線部や国家安全保衛部といった工作機関の要員たちだ。
金正恩氏は、「アップル」社の製品を好み、マックブック、iPadを常に携行しており、ネットにも自由に接続しているようだ。自分に関する報道を見ており、韓国の報道によれば、もっとも頻繁に検索する単語は「金正恩」だという。自分がどう世界で伝えられているか、意識しているようなのだ。
北朝鮮を定期的に観察しているアメリカの研究グループ38ノースによれば、最近北朝鮮が、インターネット関連施設を平壌市内に建設し、注目を集めている。
タイの通信業者とジョイントベンチャー
この施設は、平壌の中心街を流れる大同江のほとりにあり、2015年に着工された。タイの「ロックスレイ」という会社が協力しているという。まだこの施設の目的ははっきりしていないが、北朝鮮の通信省との合同事業であり、将来、北朝鮮内に外部とつながるインターネット網ができる可能性も指摘されている。
今後、北朝鮮の核放棄が進み、欧米やアジアの企業が進出することになれば、ネット環境は欠かせない。その準備をしている可能性もある。
すでに中国やロシアの業者が進出
過去にも、北朝鮮のネット事業について、韓国などで報道されている。
ロシアのインターネット通信業者である「トランステレコム」がすでに、北朝鮮内でサービスを開始している。この会社は、ロシア国営鉄道会社の子会社だ。さらに中国の通信会社の「チャイナユニコム」も2010年から、インターネット接続サービスを行っている。
インターネットといえば、北朝鮮のサイバー攻撃部隊を想像するだろうが、多くの専門家は、平壌の施設は関係ないと見ている。攻撃部隊は、ネット上で追跡されてもいいように海外で活動するのが普通だからだ。
北朝鮮は中国式ネット管理を検討中か?
今は国内だけに限定されたイントラネットが構築されており、大学などでは講義をリアルタイムに携帯などの端末で見られるようにするなど、様々な形で活用されている。それだけに、金正恩氏が決心すれば、いつでも外部世界とつながることができる。携帯はすでに350万台が普及し、多くはスマートフォンだ。無線インターネットの研究も行っていると伝えられる。
もしインターネットが北朝鮮国内で開放されれば、外部情報が流れ込み、体制にとって不安定要素になりかねないが、金正恩氏は、中国のような集中管理方式を研究しているという。インターネットが部分的にでも解禁されれば関連事業の需要が膨らみ、北朝鮮は、海外企業にとって魅力ある市場になるかもしれない。
五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)など。
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