会談と宿泊場所に選ばれた棒棰島は完全封鎖しやすく気づかれにくい好環境
会談と宿泊場所に選ばれた棒棰島は完全封鎖しやすく気づかれにくい好環境
金正恩委員長の2度目の訪中となった5月7、8日の大連。会談や宿泊場所は2010年に金正日総書記が宿泊した中心街から東南へ約8kmほどの場所にある棒棰島という中国政府要人の迎賓館として利用される場所だ。
地名に島がつくが島ではなく四方を森に囲まれた広大な敷地を持つ海沿いのリゾート地というイメージに近い。
今回は金正恩委員長が棒棰島に滞在し、2度目となった中朝首脳会談も棒棰島で行った意味について考えてみたい。
前回の記事「(金正恩委員長が2度目の訪中 大連で習近平主席と首脳会談)」で、四方が森に囲まれているので完全封鎖でき警備が容易であると紹介した。風光明媚で言い方はよくないが辺ぴな場所にあるためほとんどの大連市民は金委員長どころか習近平主席の大連入りですら気づかなかったくらいだ。
名前の由来は朝鮮人参?棒棰島は風光明媚な観光地であり大連市民なら誰でも知る人ぞ知る総合リゾート地
名前の由来になった棒棰島とは、敷地内にある海水浴場へ出ると目の前に見える「柿の種」のような形状した島の名称だ。
この棒棰島にまつわる由来が2つあり、1つは、朝鮮人参に似ているから名付けられたという由来と農作物を叩く道具に似ているからという由来がある。朝鮮半島を代表する産物で朝鮮人参に関係する場所にという警備上の理由だけではない中国側の配慮を感じさせる。
棒棰島は、1959年に建てられた「棒棰島賓館」を中心に敷地内には9ホールのゴルフ場や13棟の一戸建ての別荘、テニス場、ボウリング場、プールなどがある。かつては毛沢東主席、周恩来首相、鄧小平氏などの歴代指導者も宿泊しており、現在でも定期的に共産党の重要会議が開かれる。
今回のような重要会談などがあると一般人はシャットアウトされるが、普段は、入場料20元(約350円)で入場することができ、ホテルへの宿泊客や夏は海水浴客で賑わう場所だ。
金正恩委員長と習近平主席が海辺を歩きながら語り合う背後に一瞬映り込む「棒棰島」の赤い毛沢東主席の筆による文字を見ると大連市民ならすぐに分かるくらいの有名スポットなのだ。
金日成主席も滞在したことがある場所へ招待することで歴代の中朝指導者の絆を内外へアピール
金正恩抵達大連棒棰島國賓館現場實錄 王滬寧的表現……
朝鮮中央テレビが報じた映像を2分20分にまとめられた映像。棒棰島賓館の建物内部の映像や金日成主席の写真もしっかりと紹介されている。
棒棰島を利用するのは共産党幹部だけではない。迎賓館としての役割も担っているため、外国からの要人も今回のように会談したり宿泊したりする。実はかついて金日成主席もこの地に滞在しているのだ。中国政府は、白頭山血統の正当な後継者とする金委員長の顔を立てる最高の場所を用意したといえる。
ちなみに棒棰島賓館は3つ星となる。中国は国際基準とはまったく別の中国独自のホテル等級ルールで星をつけているが、国営や市営など官営ホテルは最大3つ星となる。棒棰島賓館は一番安い客室で1泊8000円くらいで泊まることができる。
日本人に人気があった大連近代史の象徴「大連賓館(旧ヤマトホテル)」も大連市営なので官営最高である3つ星ホテルとなる(2018年にホテルとしての営業は終了しており現在は宿泊できない)。
北朝鮮 「<記録映画>金正恩同志が習近平同志と会談 KCTV 2018-05-09 日本語字幕付き
26分のロング版。平壌出発から大連での中朝首脳会談、大連を発つまでが収められている。