輸入された3040個が回収済み
1月25日、タイ食品医薬品局(タイFDA)の副事務総長ウィティット・サルディーチャイグン医師が、台湾FDAが台湾国内で「辛ラーメンブラック豆腐キムチ」(カップ麺タイプ)に同梱される粉末調味料からキロ・グラムあたり0.075ミリ・グラムの有害物質「エチレンオキシド」が検出問題を受け、タイ国内に輸入された同製品の販売許可を凍結し、輸入業者から全品を回収、検査していることを明かした。
すでに回収が済んでいるのは、輸入が済んでいる2つの製造ロット分。「賞味期限:2023年2月4日」の480個、「賞味期限:2022年5月8日」の2560個になる。
これらは発表時点では、タイFDAによる検査中で、実際にエチレンオキシドが検出されたかどうかはまだ不明だ。
タイでは製造・輸出入が禁止のエチレンオキシド
消費者に対しては、購入の心当たりがある場合は消費をせず、タイFDAに連絡するように呼びかけている。
万が一食べてしまった場合、体調によってはすぐにFDAに通報する、よくわからない状態でも不安であればすぐに相談するよう、同時に呼びかけている。
ウィティット副事務総長によれば、エチレンオキシドはタイにおいて農業有害物質第4種に指定されているため、タイ国内での製造、輸出入が一切禁止されている。
もし、この辛ラーメンにエチレンオキシドが検出された場合、輸入業者は5万バーツ未満(約20万円未満)の罰金が科せられる。
タイ800億円市場の半分は国産の「マーマー」
タイでもインスタントラーメンの市場は決して小さくない。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店ではインスタント麺の棚が必ず用意されている。
人気はタイのブランドで、アユタヤ銀行の2022年9月公開のレポートによれば、タイ国内のインスタント麺市場規模は約200億バーツ(約800億円)になる。そのうち、86.7%がタイの3つのブランドで占められている。
この3大ブランドの2021年時点のシェア率は、実に47.6%ものシェアを持つタイ・プレジデント・フーズ社で、「マーマー」のブランド名はインスタント麺の代名詞にもなっている。
次に多いのが、タイ・プレサーブ・フードファクトリー社の「ワイワイ」で23.7%のシェア。
最後がタイで初めてインスタント麺を販売した、日本の味の素社の資本も関係するワンタイ・フードインダストリー社の「ヤムヤム」ブランド。こちらは15.4%のシェア率となっている。
辛ラーメンの知名度はあるがシェア0.6%の農心
外国勢も近年は増えてきている。日本の日清も0.7%を占めていて、タイの市場で徐々に増えてきた。
その次に人気なのが「辛ラーメン」の農心で、シェアは0.6%となる。
ただ、やはりロゴの「辛」の圧倒的な存在感で、一般的なタイ人には辛ラーメンが、外国ブランド勢の中で一番知名度が高い。
今回、辛ラーメンの1つのフレーバーが販売凍結になっているが、これが輸入業者や農心にどれくらいのインパクトを与えるかは不明だ。
元々のシェア率が低いので、現実的にタイ国内の一般消費者で問題に直面する人がそれほどいないため、ニュースとしてもタイではあまり話題になっていないのだ。
高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
タイ・東南アジア裏の歩き方ch(YouTube)、在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)