日本・韓国には特に影響なし
2020年バンコクの新型コロナが蔓延する直前の春節イベント（著者撮影）
中国政府は厳しい規制を伴うゼロコロナ政策を、2023年の春節（旧正月）に合わせるかのように解除。
これによって、新型コロナウイルス感染者の流入を防ぎたいタイ政府は、今月9日から再び入国条件を設け、水際対策を強化している。
しかし、発表当初はワクチン接種証明などの提示を義務付ける方針だったが、タイ国内の観光業界から猛反発を受け、タイ政府は同日中に一部を撤回するという混乱もあった。
結果的には、中国とインドからの入国に関してだけ出国前PCR検査での陰性証明の提示が必須で、それ以外の国、たとえば、日本や韓国は2022年7月の規制撤廃通り、なんら問題なく入国できそうだ。
出発国によっては医療保険への加入が必要に
在タイ日本大使館のサイトによれば、タイ政府が各航空会社に通知している、現時点での入国に関する条件等々は以下の通りだ。
●新型コロナワクチン接種証明書の提示は不要。
●以下に該当する場合は、新型コロナの治療費を含む医療保険への加入義務。
・入国時にPCR検査を求められる国からの渡航には、少なくとも1万米ドルの新型コロナ治療を含む保険に加入する。加入期間はタイ滞在期間＋7日間。乳幼児を含め年齢を問わず保険加入が必要。
・学生などについては、タイの受け入れ先からのレター（新型コロナ治療をカバーする保険に関するもの）などの提示で代替可。
これらの規制は、今月9日からすでに実施されていて、今年の春節休暇期間1月22日～27日をカバーする1月末までの間とされるが、期限は現状では明確になっていない。
入国規制へ本腰を…そうでもない？
日本からの渡航でも面倒を恐れる航空会社がワクチン接種や保険の確認をしているという未確認情報もあるので注意（著者撮影）
タイ政府は1月に6万人、2月9万人、3月には15万人の中国人が入国すると見積もっている。
パンデミック以前の2019年は中国人だけで年間1100万人以上が入国していた状況から見れば、タイ政府が見込んでいる中国人入国者数は微々たるもの。
そのため、実施される入国規制再強化が本腰を入れた本当に厳しいものかというと、そういうわけでもなさそうだ。
というのは、タイ政府は検疫担当官に対し、中国やインドからの渡航者に対しての入国審査における医療保険加入の確認は、ランダムに行うように指示されているとされる。
各航空会社に対しても、中国とインドにおいて保険の未加入が搭乗拒否理由になってはならないとしており、あくまでもタイ入国手続き前までに保険を購入していれば問題ない。
さらに、そういった国を経由してきた場合においても、タイ旅券保持者、乗継ぎでタイに入国しない人、タイの労働許可を保有する外国人、飛行機の搭乗員や外交・公用旅券、または、国連レセパセ（国際連合通行証）所持者は保険が免除される。
規制再強化に反発するタイ観光業界
タイの場合は、2020年の春節による渡航者がタイに新型コロナウイルスを持ち込んだというよりは、中国へ渡航していたタイ人が持ち帰り広まったとされる。
タイ政府とタイ人は、目に見えない病原に対して強くおびえる傾向にある。
そのため、渦中は厳しい規制が実施されていたものの、ある程度ワクチン接種も進んで恐怖感が薄れた今、特に観光業界は、外国人渡航者が落としていく外貨を守る方が重要となる。
タイでは、欧米であったような中国人が新型コロナウイルスを持ち込んだという被害妄想はまずなく、中国で昨年12月8日から今月12日の間に約6万人が新型コロナに関連して死亡しているというBBCの報道を見ても、タイ観光業界は、政府の規制再強化の方が容認できないようだ。
いずれにしても、日本や韓国に居住する人には影響はなさそうだ。
タイ渡航予定者は規制状況を常に要確認
特に韓国人は昨年7月の入国規制撤廃以降、日本人渡航者数の倍は入国している。入国規制が再強化されれば、韓国人の入国にも大きな悪影響を与えたに違いない。
ただ、先のようにタイ政府は、規制を発表したその日のうちに条件を撤回・変更している。
迅速な対応ができるとも言えるが、他方では、すぐに状況が変わるという意味も含む。
そのため、タイ渡航を検討されている方は、例え中国やインドからではなくとも数日前から直前まで、常に規制の状況を把握しておくべきだろう。
高田 胤臣（たかだ たねおみ）
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』（彩図社、2019年・皿井タレー共書）、『ベトナム裏の歩き方』（彩図社、2019年）など、近著『亜細亜熱帯怪談』（晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス）。
タイ・東南アジア裏の歩き方ch（YouTube）、在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と（note）
